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ラフレシ庵+ダブルメガネ


「ぬいちゃんパニック」サンプル

2019/07/03(Wed)20:42

7/21に開催するTOKYO FES Jul.2019内アナザーコントロール11の新刊サンプルです。
今回は主花ぬいちゃん本です。



 
遠距離交際をしているふたり。ある日突然ぬいぐるみに憑依してしまった相棒(鳴上悠)。元に戻すため、陽介は相棒の身体の元へぬいぐるみと共に旅に出る。

A5/28p/¥300(イベント価格)/R18

とらのあなで委託通販を扱っていただいてます。→
自家通販はイベント後に開始する予定です。

本文サンプルはつづきのリンクからどうぞ。
R18部分はこちらのブログでは載せられないので、気になる方はpixivかとらのサンプルをご覧ください。




『その子から頼まれて行ってみたら…』
「うん……うん…」
 電話越しの相棒の低くて落ち着いた声に耳を澄ましていた。だけど話の内容は頭に入ってこなくて、ただ相棒の良い声に聴き惚れていた。
心待ちにしていたゴールデンウィーク。相棒が八十稲羽に遊びに来てくれるのを楽しみにしていたけれど、そんな時、俺たちの街に危機が訪れてしまった。
桐条さんたちの協力もあって、八十稲羽を無事に元に戻すことができた。新たな仲間たちと絆が生まれたのは嬉しいことだけど、相棒と恋人として過ごす時間がほとんどなかったことが本当に心残りだった。
その時、ほんの短い時間だったけど、ふたりで言葉を交わし、何度もキスをした。その名残をいつまでも覚えていたかった。だけど時間というのは残酷で、その感触は少しずつ俺の中から消えていってしまう。
そして相棒が八十稲羽を発ってから3ヶ月が経った。
『聞いているか、陽介?』
「うん……ん? あ、わりい、何だっけ」
『…受験勉強で疲れているんだろう。名残惜しいけど、そろそろ寝ようか』
 恋人になって、遠距離というのもあって、俺たちは毎日電話やメールで尽きることのない会話をしている。それは嬉しいけど、やっぱり顔を直接見て、触れたいと思ってしまう。
「相棒…」
『どうした』
その優しく包容力のある声に、口から「逢いたい」という言葉が出そうになる。だけど、言ってどうなるっていうんだ。相棒を困らせるだけだろう。口元をキュッと引き締めた。
努めて明るい声を出した。
「んー、やっぱ良い。クマ吉のやつがやらかした話をしようかなって思ったけど、長話になりそうだから。じゃあな、また電話する」
『陽介…』
 何かを察したらしい相棒に追及されたくなくて、「お休み」と声をかぶせて通話を切った。枕元に置いてあった相棒のぬいぐるみを手で引き寄せた。
「逢いたいよ…相棒…」
相棒を模した手のひらサイズのぬいぐるみは変わらない笑顔で俺をみつめている。振り返って、クマが押し入れの中で寝ているのを寝息の音で確認すると、布団の中に潜りこんで、そのぬいぐるみを抱きしめた。
そのぬいぐるみは相棒が完二に依頼して作ってもらったものらしい。それを相棒が八十稲羽を発つ前にくれた。
もうひとつ、俺に似せて作ったヘッドホンを身につけたぬいぐるみも同時に作ってもらって、そのぬいぐるみは相棒が持っている。
相棒はぬいぐるみを俺にくれた時、こう言った。
『俺の心はいつも陽介と共にある。このぬいぐるみを見て俺のことを思い出してほしい』
二等身のぬいぐるみは可愛いけど、どこか相棒のかっこ良さを表現していて、俺から見てもたしかに相棒を感じさせてくれる。
「相棒…」
あの時のキスを思い出して、そっとその愛らしい唇にキスをする。
夏休みにまた来てくれるって言ったけど、それまで待てそうにない。自分から逢いに行ってしまおうか。でも、いきなり押しかけても迷惑だろうし、何よりお互い受験生だ。一日だって時間をムダにはできない。
そうやっていつも同じことをグルグルと考えてしまう。
「あー、ダメだ。もう寝よう」
悶々としながら、相棒のぬいぐるみを抱きしめたまま俺は眠った。



「ん……」
朝、眩しさで目が覚めると、俺の胸の辺りで何かが動いている気配がする。
「え、ちょ、虫…っ?」
クマがおやつを食い散らかしたカスでまたGが発生してしまったのかもしれない。慌てて布団を剥いで、ベッドの上に立ち上がった。
すると何かが服の上から転がり落ちた。
「……………え?」
見ると、相棒のぬいぐるみがむくりと起き上がった。
『ふう。抱きつぶされて窒息するかと思った。…まあ、もともと息はしてないが』
今、相棒の声がぬいぐるみから聞こえた気がする。
「ええっと……そんなすごい機能あったっけ?」
ただのぬいぐるみだと思っていたけど、もしかしてハイテクなぬいぐるみだったんだろうか。喋ったり動いたりするなんて聞いていない。
『陽介、逢いたかった』
そう言って、ぬいぐるみはジャンプして俺の腹に抱きついた。そして俺のTシャツを両手で鷲掴みにしてよじ登っている。
途中滑って、ずるずると落ちていく。が、また布地を掴んで懸命に登ってくる。
「え……んぁッ」
胸まで到達すると、乳首を突起物のように掴まれて、思わずヘンな声を上げてしまう。相棒にさんざん弄られて、否応なしに感じてしまうようになったこの身体がちょっぴり恨めしい。
『あ、すまない』
ぬいぐるみがそう言って、乳首の上に足を着けてひと息ついた。ますます乳首がピンと勃ってしまう。
「もっ…乳首はカンベンしたげて…っ」
思わずぬいぐるみの襟元をつまんで持ち上げた。じたじたと手足を動かしている姿が愛らしい。表情筋が動いておらず、その愛らしい瞳でじっと俺を見ている。可愛いのに全体的にイケメンでかっこよさが漂う。
「ま、まさか、本物の相棒……?」
『ああ。昨晩、陽介に逢いたいと思って寝たら、朝、こうなっていた』
とんでもないことが起こったのに、この状況を平然と受け入れている。まぎれもなく相棒だ。
手のひらに乗せると、ぬいぐるみの相棒は口の端を上げた。たぶん笑っているんだろう。
『陽介、このぬいぐるみを抱いて寝てくれていたんだな』
「うああああっ、それは、たまたま! いつもじゃなくて、昨夜は何か…」
顔を見られるのが恥ずかしくて、うつむいた。
「すっげーお前に逢いたくなって…」
『陽介…』
ぬいぐるみの相棒が手首の上をこちらに向かって歩いて来た。二の腕を短い脚でよじ登り、肩の上に乗ってきた。
『陽介、こっちを向いて』
「うん?」
ぬいぐるみの相棒は愛らしい顔を俺の口にくっつけた。ええと…? これはキス……か?
相棒は顔を離すと、口元と目元にむぎゅっと皺を作った。たぶんこれは笑顔を作っているんだ。相棒にしてはめちゃくちゃ表情筋を使っている。
『俺も。すごく逢いたかった』
途端に胸が熱くなった。この感じ、たしかにそのぬいぐるみが相棒なんだと実感がこみ上げてくる。本当に相棒が逢いに来てくれたんだ。
「やべえ、めちゃくちゃ嬉しい。けど何で?」
『もしかしたら、陽介に逢いたいっていう気持ちで生き霊を飛ばしてしまったのかもしれない』
 俺にそんなに想ってくれたのかと思うと、嬉しいけれど、同時に不安もこみ上げてきた。
「それじゃ、今、身体は? 身体は大丈夫なのかよ」
そう言うと、相棒のぬいぐるみは横を向いた。その愛らしい顔に影が差した。
『……ダメ、かもしれない』
「ウソだろ…まさか、息が止まっている、とか…?」
交通事故で生き霊になってしまい、身体の方は心肺停止の植物状態になっているという漫画を読んだことがある。想像するとゾッとした。
口元を可愛らしい手で覆い、『いや…そういうことじゃなくて』と開かない口をにょもにょと動かしている。
『……寝る前に陽介のことを考えながらオナニーをしていたから。たぶんそのまま寝落ちして下半身が丸出しになっていると思う』
「命は問題ないのか。いやー焦ったー…って、それ、ヤバい! 親御さんに見つかったら、別の意味でヤバいだろ!」
 親御さんが眠ったままムスコ丸出しの息子を見てしまったらと思うと、居てもたってもいられない。
今、こんなところでゆっくり会話している場合じゃない気がする。
「よし、今から相棒ん家に行くぞ」
今日は平日だけど三年生は登校日じゃないし、今から行けば昼くらいには相棒の家に着くだろう。明日は登校日だから、何とか今日中に解決したいところだ。
『良いのか、陽介』
「水くさいこと言うなよ。俺のことを頼りにしてくれ」
相棒のぬいぐるみは俺を見上げて頷いた。
『ああ。よろしく頼む』
「よし、すぐ支度するから待ってろ」
急いで着替えようと服を出していると、押し入れが開き、着ぐるみ姿のクマが出てきた。
「ヨースケー、ヒトリゴトがうっさいクマねー」
眠そうに目を擦りながら、クマが相棒のぬいぐるみを見ている。
「ん? およよよ」
クンクンと匂いをかいでぬいぐるみに近寄ってきた。
「このぬいちゃん、センセーのニオイがするクマ」
「ああ。相棒がこの中に乗りうつっちまったらしくてさ」
「ほよよ。センセー! 元気クマかー」
そう言って、クマは相棒のぬいぐるみの両手を持って、クルクル回っている。相棒の目が回っているので慌ててやめさせた。
クマは存在そのものが奇跡みたいなヤツだからな。こんな現象が起きても驚かないらしい。むしろ嬉しそうに相棒を歓迎している。
『ふう…久しぶりだな、クマ』
「センセー、ぬっぬっしか言わなくなっちゃったクマか? そういうお遊び?」
「え…? お前、相棒の言葉がわかんねーの?」
試しに相棒が『クマ、俺の言葉が聞こえるか?』と、もう一度声をかけたけど、クマは「ぬい、ぬいって鳴き声みたいクマね」とノンキに笑っている。
思わず相棒と顔を見合わせた。
『これは…ますます陽介が頼りだな』
「ま、どの道、本体がヤバい状態でクマは連れていけないしな。急ごうぜ」
クマに帰りが遅くなるかもしれないと伝え、着替え終わると、財布とスマホを尻ポケットにしまった。そしてお気に入りのヘッドホンを首にかけた。相棒もヘッドホンがあった方がそこに掴まれてちょうど良さそうだ。
「行くぜ、相棒!」
 相棒は『ああ』と、肩の上で飛び跳ねて応えた。




◆◆◆◆中略◆◆◆◆




『俺の部屋はこっちだ』
そう言えば、相棒の家に行くのは初めてだ。何か急にドキドキしてきた。まさか初めてのお宅訪問がぬいぐるみに憑依した相棒と一緒だなんて夢にも思わなかったけど。
扉を開けると、部屋の奥にあるベッドで相棒が横たわっていた。近寄って様子をうかがうと、青白い顔をしているが、ちゃんと息をしていてホッとした。
「良かった…」
『いや、結構大変な状況かもしれない』
相棒の声に見ると、ぬいぐるみの相棒が本体の股間を指さしている。
「うっ、これは…」

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