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ラフレシ庵+ダブルメガネ


家族ごっこ11

2020/10/25(Sun)22:19




ペルソナやテレビの世界がなく、事件も起こらなかった八十稲羽の数年後のお話。主人公(鳴上悠)が小西先輩の息子という特殊設定です。

だんだん語彙が増してきて、今にも陽介の語彙を越しそうな勢いの悠君です(^^)
小学生で習う漢字を一個一個調べていた時期が懐かしくなってきました。
中学2年生の悠君の成長ぶりを楽しんでいただければ幸いです。







「だから、僕は早く仕事をしたいんだってば」
「お前の気持ちはわかってるっての。けど、料理人になれたとしても、もしやってみて、向いてなかったらどうするんだよ。大学卒じゃなきゃ就けない仕事だってあるんだぜ」
「大丈夫だもん!」
 先生が僕と陽介を交互に見た。
「あの、ふたりとも落ち着いて。とにかく、鳴上君は料理人になりたいと。そして花村さんは高校に行ってほしいと。そういうことで良いですね?」
 陽介との話し合いに夢中になっていて、先生との三者面談だってことを忘れていた。
「はい。せっかく頭が良いのに進学しないのは道を狭めてしまってもったいないと思います」
「僕は早く仕事をして、陽介の負担を減らしたいです」
 同時に僕達がうなずくと、なぜか担任の先生は笑った。
「そうですね。まずは実際料理人になった人の話を聞いてみるのはどうでしょうか。情報が足りないままよりも、色々知ってからの方が今やるべきことが見えてくるんじゃないでしょうか」
 そう言われて、陽介と顔を見合わせた。先生の言うとおりだ。よく知らないまま、ふたりで言い合っていたけど、実際に料理を仕事にしている人に話を聞けば良いじゃないか。
 陽介が口を開いた。
「あー、だったらうちのホテルの料理人たちに話が聞けるかもしれません。お願いしてみます」
「悠君はまだ2年生ですし、業界の方の話を聞いてみてからでも遅くはありませんよ。職業体験も今度やる予定なんで、気になるお店にお願いして参加してみるのも手かもしれません」
 陽介は頭を手でかいた。
「…ありがとうございます。俺だってその業界に詳しいわけでもないのに…頭ごなしに言ってもしょうがないですよね。すいません、ついカーッとなっちゃって」
 先生はにこやかに笑った。
「いいえ。熱心な保護者の方はもっとヒートアップしますよ。今の時期から受験を視野に入れている親御さんも多いですし」
 その後は最近の成績の状況を先生が話してくれた。僕はこの前の中間試験で学年でもトップの成績だと言うと、陽介は笑顔で僕の頭を撫でてくれた。
「こいつ、家でも勉強を頑張っているんで。その努力が実を結んでいるってことを嬉しく思います。やったな、悠」
 そう言って、自分のことのように喜んでくれた。それを見て、僕まで胸にあったかいものを感じた。頑張ったかいがあった。陽介のことを悪く言うヤツもこれでちょっとは減ったかな。
「クラスでは悠、どんな感じですか?」
「穏やかな性格で勉強もできるので、友達もたくさんいますよ。ただ…最近ちょっとクラスの皆がピリピリしていまして。いじめに遭っている生徒がいて、その子を悠君がかばったんですが、そしたら矛先が悠君に向いてしまいまして」
「えっ」
 その話は陽介には言わないでいた。だから思わず視線を反らした。隣にいる陽介の視線を痛いほど感じる。
「お前、何を言われたんだよ」
「……僕は何を言われたって平気」
 僕は口を閉ざした。「親があんなヤツにヒーローごっこされてもなあ」とか、「ホントの親に虐待されて、しかも育ての親にイタズラされてるなんてお前、前世はどんな悪いことしたんだよ」とか「一緒にいると不幸菌がうつる」とか。そんなこと言われたなんて、陽介にだけは絶対言いたくない。
 自分がからかわれるのは無視できる。だけど大切な人の悪口は許せない。カアッと頭の奥が熱くなって、悪口を言ったヤツに飛びかかって殴りそうになった。
 だけど、暴力を振るうと陽介が学校に呼び出されてしまう。お仕事を一生懸命頑張っている陽介のジャマだけはしたくない。僕のために陽介が頭を下げる姿なんて見たくない。
 そう思って、歯を食いしばって、握り拳を作って、耐えた。
「お父さんのことも陽介のこともよく知らないのに、そんなこと言わないで」
 それだけ言って、後は無視した。
 だから勉強で、運動で、見返すんだ。陽介が育ててくれたことを悪くなんて言わせない。
「悠」
 ちょっと低い声で、陽介の視線を感じて、おそるおそる陽介を見た。陽介はまっすぐに僕を見ていた。
「お前は何も悪いことしてないんだろう。友達をかばった。そうだろう?」
 思わず首を縦に振る。
「だったら胸張っとけ。これから社会に出てもそうやって人を貶めるようなヤツらはいる。だけどな、お前は胸を張っていれば良い。まわりの人を大切にしていれば、お前のこと、わかってくれる人はちゃんといるからな」
 その言葉に強く頷いた。
 先生も真剣な顔で頷いた。
「見つけた時にはイジメた生徒にその都度注意しています。あまり酷い場合はそちらの親御さんとも面談してどうにか鎮めようとしていますので」
「大変だとは思いますがよろしくお願いします」
 陽介がお辞儀をするのを見て、ぎゅっと歯を噛みしめた。僕のことで迷惑をかけたくないのに、陽介に頭を下げさせて、僕はまだまだ子どもなんだなと実感した。



 陽介がお願いしてくれて、日曜日の昼、和食の厨房を見学させてもらえることになった。
 陽介と一緒にエプロンと頭巾を身につけて厨房に入った。
「料理長、頼みを聞いてくださってありがとうございます」
「よろしくお願いします」
 料理長と呼ばれるおじさんにふたりで一緒にお辞儀した。白髪のおじさんは僕の肩をぽんぽんと軽くたたいた。
「悠君はうちのホテルの顔だからね。特別だよ」
 料理長をはじめ、料理を担当しているメンバーはホテルがあちこちのレストランや料亭から引き抜いた元料理長とかフランスの有名レストランで修行したシェフたちだと陽介が説明してくれた。
「他のホテルだと料理は外注してホテルでは温めるだけってところも多いけど、うちはちゃんとここで一から作っているんだ」
 ホテルのモデルをしていた時に、撮影のために料理を食べさせてもらったことがある。どの料理もすごく美味しくて、キラキラした見た目の料理ばかりだった。僕がいつも作っているご飯とは全然違う。
 料理人の皆の邪魔にならないように、部屋の隅っこで覗き込むようにして見学した。
 厨房のみんなはてきぱきと野菜を洗ったり、切ったり、火にかけていて、料理の手際がすごく良い。お皿への盛り付けも素早いけどとてもキレイで、分担しているのもあって、あっという間に料理が出来上がっていく。
「すごい…」
 お客さんに最後の料理を出す頃には午後2時になっていた。お客さんによっては遅い時間に来ることもあるんだ。ずっと立っていたから足がしびれてしまった。お腹も空いてぐうぐう鳴っている。これを毎日続けるんだ。お仕事で料理を作るのって大変なんだな。
 お客さんに出す料理が終わっても、まだ料理を作っている。次の夕食の仕込みをしているのと、皆で食べるまかない料理を作っているんだそうだ。
「ようし、そろそろ休憩するか」
 料理長がそう声をかけると、他の人たちが移動し始めた。近くにあるテーブルに作った料理を並べ始める。
「悠君と花村さんもこっちに座んな」
 呼ばれて、僕達も一緒にご飯を食べさせてもらった。
「これは残り物の野菜や肉で作った料理なんだ。どうだい?」
「すごくおいしいです。見た目もきれいでビックリしました」
 料理長や他の皆もニコニコして僕を見ている。
「僕、料理を作る人になりたいんですけど、どうやったらなれるのかわからなくて。教えてください」
 お願いすると、皆がぽつぽつと話し始めた。
「俺は料理の専門学校に行って、知り合いに紹介してもらった高級旅館で働いていたな。3年くらいで引き抜かれて今に至るって感じ」
 持っていたノートにメモを取り始めた。陽介は料理長に話しかけた。
「料理長は前は『みよし乃』にいたんすよね。官僚とかが出入りするっていう」
「ああ。だが、最初はただ食べるために働いていたって感じだったんだ。皮むきとか掃除とか皿洗いばっかやらされてたなあ。料理が上達するとだんだん面白くなってきて、料理長のやっていることを見て盗んだり、自分でも研究して、何の知識もないゼロからのスタートだったんだ」
 知らないことは全部ノートに書いて、全部自分で料理して試して、知識を積み重ねていったらしい。
「美味い料理を作りたいって試行錯誤しているうちに今があるって感じだな」
「和食の世界はまだまだ奥が深いっすよねえ」
「料理の道にどれが正解っていうのはないんだよなあ」
 皆の話を聞きながら、ただ料理の学校に行けば良いって感じでもないことがわかった。
「それに自分の店を開きたいなら経営のことも考えないといけないしな」
「そうそう。もし大学に行けるんだったら、栄養学とか経営とかも学んだ方が絶対損じゃないよ」
「最近は栄養バランスを考えた食事も売りになったりするからな。あと食品アレルギーも気を遣わないといけないし」
「そういうのを学べる高校もあるらしい」
「ああ、聞いたことある。たしか四国のどっかの町が助成しているとかいう」
「それそれ。県外に人口が流出するのに歯止めをかけたくて、外からも学生を募集しているんだとか…」

 有名なところに弟子入りするのは競争率が高い。
 それにある程度腕がないと雇ってもらえるところは少ない。
 自分が料理をプロデュースしたいのか、ただ料理人になれば良いのか、お店を開いて繁盛させたいのか、はっきりビジョンがないといけない。
 料理もただこなせば良いってものじゃない。創作して、その店にしかない看板メニューを生み出す力が必要。
 ただ食堂で働きたいっていうだけならそこまでする必要はない。
 有名な人にコネクションがある人は強い。その人の紹介って言えば新たな門戸をたたきやすい。
 コミュ力のある人とない人だったらお店はコミュ力のある人を選ぶ。今のうちからたくさんの人と仲良くなっておく力を身につけると良い。


 ぜんぶメモして、わからないところは後でネットや本で調べようと思った。
 食事を終えると、片付けを一緒に手伝った。隅から隅まで丁寧に掃除をした。
 お客さんが気持ち良く過ごせるようにするためと、衛生面にも気をつけないと食中毒が起きたりして、店が大打撃を受けることもあるんだそうだ。


 料理長や他の皆にもお礼をして、陽介と一緒に帰った。
「いっぱい話が聞けたなあ」
 鮫川沿いを一緒に歩きながら、陽介がそう呟いた。
「うん。僕、もっと調べたり、ちゃんと考えなくちゃいけないってわかった。今日、連れてってくれてありがとう」
「いや、俺も反省した。就職に失敗した時のために高校に行った方が良いとか言ってたけど、考えが甘かったっつーか。料理の道って生半可な気持ちでは行けないんだな」
 ふたりで頷き合った。
「もっと調理の専門学校とか高校とかお店とか調べて、見学できるところがあったら見学させてもらって、進路について一緒に考えよう。あと、なるべく休日は美味いメシのあるところに食いに行って、料理の研究もしようぜ」
「うん」
 調べることも多いし、もっと具体的にどういう料理人になりたいか、自分の目標を決めなくちゃ。やることがいっぱいあって、ワクワクした。
「明日、フランス料理の方のシェフにも頼んでみるから」
「うん。お願いします」
 僕は子どもだなと最近よく感じる。大人の人にたくさん助けてもらっている。陽介だけじゃなくて学校の先生や、陽介の職場の人や、児童相談所の田村さんや佐藤さん、花村のパパさん、ママさん。きっと気づかないところでもいっぱい助けてもらっているんだろう。
「僕、早く大人になって恩返ししたいな」
「ん?」
「陽介やみんなに助けてもらった分、みんなにいっぱい恩返ししたいな」
 そう言うと、陽介はなぜかおかしそうに笑った。
「俺もそうやってみんなに助けてこられたんだ。大人の今でもな」
「大人になっても?」
 陽介は頷いた。
「そうやってみんなでちょっとずつできることをやって助け合って、世の中って回っているんだよなあ」
 そう言われて気がついた。たしかに、料理をする人だけでは世の中は困ってしまう。学校の先生をしてくれる人、自分の服や身の回りの物を作ってくれる人、ジュネスの店員さん、おまわりさん、色んな仕事をみんながちょっとずつ受け持ってくれるから僕たちは暮らしていけるんだ。
「僕は料理で人の役に立てる人になりたいな…」
 ただお金を稼いで陽介を楽にしてあげたい、陽介を笑顔にしたいってだけじゃなくて。とびきり美味しい料理を作って、疲れた人を笑顔にしたい。そしていつかお父さんにも食べてもらいたい。
「うん。なれるよ。お前なら」
 陽介が僕の背中を押してくれて、何だか勇気が湧いてきた。
 まだ何をどうしたら良いかわからないけど、陽介が言うならきっとなれる。そんな気がした。


 家に帰ると、ポストの中に陽介宛に手紙が届いていた。
「陽介、手紙が来てる」
「ん?…ああ」
 一瞬、弁護士事務所と字が見えて、気になったけど、陽介は難しい顔をして、その手紙を仕事に行く時のバッグの中に入れた。
「もしかして、お父さんのこと?」
「お前は気にしなくて良い」
 なぜかちょっと怒ったような顔で言うから、よけいに気になってしまう。だけど大人の話に僕が首を突っ込んで良いものかわからないので、話はそれで終わってしまった。




 陽介が仕事から帰ってくるまでに食事の支度をして、出来た頃に食べられるよう準備しよう。中学生になってからはひとりで料理を任せてもらえるようになった。
 陽介と一緒に作る時間も楽しいけど、それだとどうしてもご飯を食べる時間が遅くなってしまうし、お腹ぺこぺこで作るからつい簡単に済ませてしまう。だからこうやってじっくり料理できる時間があるのは嬉しい。
 スマートフォンでレシピを調べることができるから、一週間違うメニューを作ることができて、料理の幅は広がったと思う。
 今日はブリが安かったのでブリ大根にした。大根が煮崩れしちゃって形が悪くなってしまった。あとで料理ノートに書いておいて、煮崩れしない方法を調べておこう。
 味噌汁は昨日の残り物の炒め野菜を入れて豚汁風に仕立てて、あともう一品、さっぱりとしたものが欲しいから、レンコンとおかかの梅酢和えを作った。
 料理をしている間は色んなことを考えないで集中できるから好きだ。
「ただいまー。お、良い匂い」
「陽介…お帰り」
「おっ、ブリ大根じゃん。うまそう」
 陽介が部屋着に着替えている間に料理をテーブルに並べる。
「なんか今日、元気ない?」
 尋ねられて、思いきり今日のことを思い出してしまって、またムカッとした。
「学校でなんかあったか?」
 またお父さんのことをバカにされた。陽介のことをひどく言われてしまった。だけどそれを陽介には言いたくなかった。そんなつまらないことで陽介を傷つけたくなかった。
「…別に」
 自分でも誤魔化すのがヘタだと思う。もっとうまく隠すことができたら良いのに。自分で自分が嫌になる。
 息を吐き出すような笑い声がして、思わず陽介を見た。
「お前もついに思春期に突入したんだなあ」
 こっちが真剣に悩んでいるのに陽介はわしゃわしゃと僕の頭を撫でた。
「からかわないで」
「わりいわりい。そんなつもりじゃないんだ。けどさ、俺もそんな風にいちいち悩んじゃう時期があったなあって思って」
「…陽介が中学生の時はイジメとか陰口ってあった?」
 陽介はうなずいた。
「なんか中学の時期ってさあ。みんな繊細で、しかも受験のプレッシャーとか内申点が気になったりとかでピリピリしてんだよなあ。だからっていじめをして良い理由にはならないんだけどな。大人しい女の子が目立つグループからいじめられてさ、守ってあげられたら良かったんだけど、そういうのって男子が絡むとよけいこじれるからさ。傍観しちゃってたんだ」
「ふうん。陽介にも中学生の頃があったんだね」
 陽介の中学の頃をちょっと想像できない。
「おいおい、俺だってずっとおじさんだったわけじゃねーかんな?」
 そう言えばママさんが陽介のアルバムを見せようとするのを頑なに陽介が拒んでいたっけ。
「あの頃はヘラヘラ笑って、本音じゃ違うことを考えてたのに、その場の空気に合わせてさ。そういう自分をカッコ悪いって思っていたなあ」
「陽介は格好良いよ。僕を助けてくれたもん」
 俺のことを守ってくれた。お母さんが死んじゃった時も、お父さんに連れて行かれた時も。僕の心を支えてくれた。
 陽介は頬を赤くした。
「だ、だろお?」
「うん、大好きだよ」
 本心からそう伝えると、陽介は目を見開いて、それから困ったように目を伏せた。そうだった。陽介を困らせないと決めたばかりなのに。
「…大人になるってそういうことなのかな」
「うん?」
 陽介が顔を上げた。
「うまく言葉にできないけど……陽介が困っている子を助けられなかったのが助けられるようになれるようになったのと同じで。僕ももっと助けられるような強い人になりたい」
 陽介を守れるような人になりたい。陽介が困っている時、真っ先に助けられる自分でありたい。
 陽介はやわらかく微笑んだ。
「大丈夫、お前ならきっとなれるよ」
「うん」
 陽介といるとドキドキもするけど、やっぱりホッとする。学校で嫌なことがあってもまた頑張ろうって思える。
 陽介のことを悪く言わせないためにも、もっと勉強や運動も頑張ろう。それにいじめのことがあっても仲良くしてくれる男子たちがいる。他のクラスメイトにも声をかけてみて、もっとクラスが明るい雰囲気になるように頑張ってみよう。
「あ、そうだ」
 クラスメイトの男の子たちが「これ見て元気出せよ」ってメッセージアプリで動画のURLを送ってくれたんだっけ。ニヤニヤした顔で「夜になってから観ろよ」って言って何かヘンな感じだったけど、どんな動画なんだろう。
 ご飯を食べ終わってからお茶を飲みながらスマートフォンで確認した。
「ん? どうした」
「なんか友達が動画のURLを送ってくれて……」
 観ると、それはエッチな動画だった。裸の女の人があんあん言いながら、男の人の上に跨がって腰を左右に振っている。
 音が大きくて、あわててスマホの画面を閉じた。が、陽介は気づいてしまったようで、ニヤニヤとした顔をして皿を片付け始めた。
「悠もお年頃になったなあ」
「ち、違う! 友達が、友達が送ってきて…ッ」
「はいはい。観るのは良いけど、程々にな」
「本当に違うから!」


 陽介が風呂の支度をはじめて、恥ずかしくて顔が熱い。陽介が先に風呂に入ったのを確認してから、音を小さくして内容を見た。
 あくまで友達が励ましのつもりで送ってくれたから、そう。これは確認だ。
 観たことのない映像にドキドキしてしまう。授業で赤ちゃんの産まれるまでの過程を聞いていたけど、さすがにこんな映像は見なかった。これがセックスなんだ。



 陽介の後にお風呂に入った後も、灯りを消して布団に入った後も、ずっと動画の内容が頭から離れない。興奮して寝付けない。
 その夜、動画の女の人の代わりに陽介が裸で腰を揺らしている姿を妄想してしまって、おちんちんが痛くて、眠れなくなってしまった。
 布団の中でこっそり自慰をして、隣で眠っている陽介に何度も心の中でごめんなさいと謝った。


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No.304|主花SS「家族ごっこ」Comment(0)Trackback

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