ラフレシ庵＋ダブルメガネ

2024/10/27 スパーク発行の主丸新刊のサンプルです。
一緒に住み始めた主人公（暁 透流）・モルガナ・丸喜の3人のすれ違いやケンカ・仲直り模様を書きました。
ちょこっとだけP4の主人公（鳴上 悠）と陽介が出てきます。
そしてゲストで大峪七生さんが2ページ主丸マンガを描いてくださいました！
つづきリンクから本文サンプルやゲストページサンプルが読めます。

A5サイズ/20p/コピー本/200円/(イベント・自家通販価格)/全年齢向け
通販は自家通販のみです。
自家通販はイベント後に開始します。




ペット可、なるべく駅近、僕の職場と透流君の大学へのアクセスが良い路線。

建物の築年数や外観はかなり古いけど、リノベ済で内装はカウンターキッチンでお洒落な雰囲気がある。バスルームの小さな窓が廊下面と接していてモルガナ君が出入りしやすいのも良いと思った。バスルームにはバスタブがついておらずシャワーしかないけれど、近くに安く入れる銭湯があるのでいつでも広い風呂にゆっくり浸かることもできる。
スーパーやリサイクルショップもあって買い物にも不便はない。
何より透流君がかつて居候していたルブランにも近い四軒茶屋駅の物件が見つかったことが決め手だった。部屋を見学してふたりでその場で即決した。
「三〇五号室だったよね」
「ああ」
契約を済ませて鍵を受け取ると、早速坂本君や喜多川君に引っ越しを手伝ってもらって一人暮らししてた時に使っていた洗濯機や冷蔵庫など大きな家具を運び入れた。大まかには配置できたので後は使っていきながらレイアウトは替えていけばいいだろう。二人には引っ越しが落ち着いた頃にお礼で食べ放題のビュッフェで奢ることを約束したら喜んでくれた。
「そういえばこの部屋どう使います？」
透流君は向かい合わせの六畳の部屋ふたつを見比べながら言った。
「僕より透流君の方がテキストとかで荷物が多いだろうし好きな方を使って。何だったら僕が寝る部屋にも荷物を置いてくれて構わないよ」
「寝る部屋？」
透流君が目を見開いて僕を見た。何かヘンなことを言ったかな。
「寝室、分けるつもりなんですか。俺は一緒に寝るつもりで布団をリビングに置きました」
そう言われてハッとした。ふたりで一緒に寝るって……想像してつい顔が熱くなってしまう。
「だってほら、僕、仕事で朝早かったり夜が遅かったり睡眠時間がバラバラだから。透流君の睡眠の妨げにはなりたくないんだ」
「ああ。そういう……」
透流君は頷きながらも眉根が寄っている。
「……もし個室に布団を置いたらふたり一緒に寝るには狭いですよね」
「え？……そうだね」
六畳の部屋だから他の荷物を置いたら布団はひとつ敷くので精一杯だし、ひとつの布団で寝れないことはないだろうけど確かに落ち着いて眠ることはできないだろう。
それっきり透流君は黙ったまま引っ越しの段ボールを片付け始めた。もしかして怒ってる？ そう尋ねようとしたけれど、透流君が「こっちの個室、もらいます」と言って自分の部屋の中に段ボールを持って入っていったので声をかけそびれてしまった。
「はあ……」
とりあえず今は自分の荷物を片付けてしまって、後でふたりで話し合う時間を設けよう。
「マルキ、疲れたのか？」
モルガナ君が荷物の影から現れた。
「ううん。平気だよ。ありがとう」
モルガナ君を心配させたくなくて笑顔で答えた。
モルガナ君はというとホコリでくしゃみしたり、うろうろしながら自分の落ち着ける場所を探している。部屋から出てきた透流君に踏まれそうになって「危ねえよ！」と声を上げている。見た目は猫なのに会話できるのが今でも新鮮にビックリしてしまう。
モルガナ君はドアが開いているバスルームにするりと入り、バスタブの縁に上がった。
「……オレ、手伝えることねーし。ゴシュジンのとこに行ってくる」
「そっか。気をつけて行ってらっしゃい」
モルガナ君は一瞬だけこちらを見た。そしてすぐに窓辺に登って、器用に風呂場の窓を開けて出て行った。
何だかその背中が寂しそうに思えるのは気のせいだろうか。
「モルガナ君、なんか様子が変じゃなかった？」
段ボールをたたんでいる透流君に声をかけたが、透流君は気づかなかったらしく首をかしげた。
「さあ。モルガナの機嫌は天気みたいなものだから」
「そうかな？……何でもないんだったらいいけど」
「それより、さっきの話の続きです」
その言い方に何だかちょっとひっかかってしまう。

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