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ラフレシ庵+ダブルメガネ


主花「青春フルーツポンチ2」サンプル

2024/10/17(Thu)19:36



WEBで掲載してきたSSの再録集第2弾です。
目次↓



書き下ろし2作あり。下部のつづきリンクに書き下ろし部分のサンプルがあります。
ほのぼのからバッドエンドまでなんでも許せる方向けです。

文庫サイズ/266p/1500円(イベント・自家通販価格)/R18
とらのあな→https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031192447

自家通販はイベント後に開始します。
◆「弱点克服」サンプル◆

陽介とふたりでテレビの中の世界のエントランスへ降り立った。
「よし。やってみるか」
意識を集中し、イザナギを喚び出した。
「行くぞ。陽介」
「ああ。来い!」
「ジオ」
スキルを放つと、陽介の頭上に雷が降り注いだ。ジライヤが回避しようと陽介を担いで即座に動いたけれど、雷は陽介とジライヤ両方に降り注いだ。
「くはっ!」
陽介は地に伏して、痺れたまま動けなくなっている。苦痛で顔が歪んでいる。
「くっそ、もう一回!」
「無理してないか?」
汗を拭いながら陽介は首を振った。
「ダメージ自体は大きくないから平気……来いよ」
大きく息を吸って、陽介は呼吸を整えた。目の前の困難に立ち向かおうとする顔が頼もしい。
「じゃあ行くぞ」
その後も回復しつつ何度か試みたが、やはり弱点を克服することはできなかった。
鍛錬を積み重ねるのと弱点の克服とは勝手が異なるようだ。


後日。ジュネスで集合している最中に陽介がぼやいた。
「この弱点ってどうにかできないもんかな」
弱点を何度も浴びればそのうち克服できるんじゃないかという実験は失敗したことを皆に告げた。
直斗が頷いた。
「確かに……弱点を突かれると形勢が傾きかねないですからね」
「お前って弱点がないよな。直ちゃん」
「花村先輩……その呼び方、わざとですよね」
直斗は子どもみたいな表情で感情をむき出しにしている。直斗を特捜隊の仲間のひとりとして迎えるにあたって今までのわだかまりがなくなるよう、そうやって陽介なりにいじっているらしい。他の皆も今ではすっかり直斗を仲間の一員だと思っているようだ。本当に陽介は俺たちのムードメーカーだな。
それにしても今まで弱点というのは誰にでもあるのが当たり前だと思っていた。しかし直斗には属性弱点がなかった。ならば弱点を克服することもできるのではないか。そう陽介が考える気持ちもわかる。
「愛称があるくらいでちょうどいいだろ。んで、弱点がないってどんな感じ?」
直斗は困惑したような表情でキャスケットをかぶり直した。
「どんなと言われても僕にもよくわかりません」
陽介は「そっかー」と両手を広げ、天を仰いだ。不意に視線だけこちらを向いた。
「お前みたいにペルソナをつけ替えできたら苦労しないんだけどなあ」
思わず苦笑いした。
「りせ。俺たちの弱点ってどういうものだと思う?」
ナビに特化したりせなら見え方が違うかもしれない。そう思って尋ねてみた。
りせは「うーん」と顔を傾けた。
「ペルソナは心の力……弱点っていうのは自分自身が苦手だって思うことじゃないかな。そういうのを乗り越えられたらきっと力にも変化があると思う」
「自分自身が苦手だって思うもの……ってあたしの場合、虫とかホラー!?」
里中が慌てて隣の天城にひっついた。天城がホラー映画さながらのうっすらと影のある笑みを浮かべた。
「ふふ……千枝、一緒にオススメ映画、観る?」
「無理無理ー!」
 りせは顔を傾けた。
「うーん、そういうのとはちがうと思う。もっと自分の心との向き合い方みたいなハナシ」
「んだよソレ。ハッキリしやがれ」
りせが立ち上がり、完二につっかかっている。じゃれ合ってる二人を直斗が仲裁しようとしている。
一年生組もいつの間にか仲良くなったらしい。微笑ましい光景だ。
「仲良し? クマもまぜるクマー!」
そこにクマが加わって話に収集がつかなくなったため今日は解散となった。


女性陣は完二に送ってもらうように頼んだ。するとクマも女子たちを送りたいと言い出したのでわいわいと皆で帰っていった。そのまま家に帰る陽介と一緒に鮫川沿いを歩いた。
「苦手って思う心かあ」
ぼんやりと陽介は鮫川を眺めた。
「陽介は何か心当たりはあるか? たとえば俺が苦手とか」
冗談まじりに言ったのだけど、陽介は目を見開いて視線を反らした。
「陽介?」


◆「アンドロイド」サンプル◆


「アメリカへ視察?」
ふたりで夕飯を食べている時にそう切り出されて、思わず聞き返した。
相棒は肉じゃがを咀嚼しながら頷いた。
「うん。アイギスたちと同時期に桐条が作った兵器目的ではない機体があるらしくて。美鶴さんの視察に急遽組み込まれて一緒にどうかって誘ってもらったんだ。シリーズの原型に近いけれどアイギスたちとはまた違ったアプローチの仕方で面白そうなんだ」
そう熱く語り始めた。
相棒はロボット工学の博士を修了すると桐条のラボで働くことになった。相棒がロボットを作るなんて意外だなと最初は思ったけれど、プラモデルを組み立てるのにはまっていた時期があったのを思い出して妙に頷いたな。こいつはいったんハマるととことんやり尽くすタイプだし。なにより人の心をもつアイギスに出会ったことも相棒にとっては大きかったかもしれない。
相棒は今、人を幸せにするためのロボット研究開発に取り組んでいる。
桐条から発売されている介護サポートアンドロイドやペットロボットはひとの心に寄り添ってくれると口コミが広まって今やトップシェアを誇っている。その開発にも携わってきたらしい。
「ふーん。それで何日間?」
「一週間。今度の月曜から」
「オッケー。楽しんでこいよ。お土産話待ってるぜ」
すると何か言いたげな顔で相棒がじっと俺を見ている。
「寂しくないのか?」
「それは……まあ。お前の美味い手料理が食べられないのは残念だけどな」
「料理だけ?」
甘ったるく微笑まれて顔を傾けられたら、何も言えない。
「……バカ。そういうの、食事中に言わすな」
「うん。それじゃあとでまた聞く」
冷めてしまった味噌汁を慌てて飲み干すと、目の前の相棒に見つめられているのに気がついた。その視線がくすぐったくて思わず白いご飯をかきこんだ。





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