主丸本「秘めごと」サンプル
2025/04/19(Sat)17:29
2025/5/4発行予定の主丸本のサンプルです。
丸喜が自分には秘密にしてどこかへ出かけている。
そのことが気になって仕方ない主人公(暁 透流)が浮気を疑って尾行する。その先にいたのは芳澤だった。
書き下ろし「秘めごと」の他、webで掲載していた作品を収録。
おまけで両面描き下ろししおりつき。
A5サイズ/100p/1000円(イベント・自家通販価格)/R18
通販はとらのあな・自家通販。
とらのあな→https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031234935
自家通販はイベント後に開始します。
以下リンクから本文サンプルへ
こちらでは健全部分のみ掲載。成人向け内容はとらのあなとpictBlandでのみ掲載しています。
「……どうする? つづき……する?」
丸喜に密やかな声で尋ねられて思案した。会話しているうちに性欲もおさまってきた。いや、丸喜がしたいというのならやぶさかではないが。仕事で疲れていただろうに無理させてしまった自覚はある。
「いや。もう休もうかな」
「そっか……。うん」
丸喜はなにか含みのある顔で頷いた。よろよろと力なく起き上がった。
「じゃあ、シャワー浴びてくるね」
「だったら俺も行く。丸喜の身体、俺が綺麗にする」
「僕は大丈夫だよ。君はゆっくり休んでいて」
丸喜に額を口づけられて、行き場を失ってしまった手でぬくもりの残る額に触れた。
最近、丸喜の様子がおかしい。
そう気がついたのはとある土曜の午前中だった。寝起きで朝ご飯の準備をしていると丸喜が外出するのか身支度を整えていた。見たことのない新品のトレーニングウェアを着ている。
ゆうべは遅い時間まで仕事だったから、いつもの休みみたいに午前中いっぱいまで寝るのだと思っていた。
「今日は丸喜、休みじゃなかった?」
「ああ。うん。散歩に行こうと思ってね」
「だったら俺も行く」
丸喜は朝食の準備を手伝いながら首を振った。
「ごめんね。他にも所用があるものだから」
やんわりと拒否されて、初めてのことで混乱した。必要なものの買い出しなら皆で出かけていっぺんに済ませている。だとしたら病院とか。
「まさかどこか悪いとか……?」
「ううん。散歩に行くくらい元気だよ。心配しないで」
それ以上丸喜は話さず、朝食が終わると食器を洗ってから「それじゃあ行ってきます」と出ていった。
「ん……? マルキ、どっか行ったのか?」
モルガナが寝床から出てきた。寝ぼけまなこで玄関の方を見ている。
「モルガナ……どうしよう。丸喜が行き先も告げずに出ていった!」
「子どもじゃねーんだからそのくらいあるだろ」
今までのことを振り返ってみたが、一緒に住み始めてから今まで丸喜が行き先を告げなかったことなど一度もなかった。いつもひとりで行動する時は必ず行き先を告げてから出かけていた。
「まさか浮気……」
そういえばこの前の夜、セックスした後、様子が少しおかしかった気がする。まさか誰か他に本命ができたとか? いや、丸喜に限ってそんなことはないだろう。だけど丸喜は一度思い込んだら一途な性格だってことは今までの経緯から知っている。
「おいおい、落ち着けって」
モルガナが何か言っているがまったく頭に入ってこない。追いかけた方が良いだろうか。そう思ったが丸喜を信用しないのもどうかと思い必死に思いとどまった。
それから毎週のように丸喜は同じトレーニングウェアを着て出ていった。
やっぱり丸喜は行き先を具体的に言わない。丸喜は「本当に問題ないから心配しないで」と困ったように笑うばかりだ。
それだけだったらまだ寛容な振りをして許せたと思う。
けれどあれから丸喜はやんわりとセックスを拒否するようになった。明日は休みか尋ねると、「休みだけど朝から用事があるんだ」と言われてしまう。夜に誘いづらくなってしまった。もう一ヶ月もしてない。本当なら毎日でもしたいのを我慢して、丸喜の休みに合わせて週一くらいのペースで抱いていたのに、だ。
もしかして俺、なんか気づかないうちに嫌われるようなことをしたか? それとも誰かに心が移ってしまった?
もう確かめずにはいられない。
「行くぞ、モルガナ」
「はー、結局尾行するのかよ! 仕方ねえなあ」
駅方面に行っていることは確認済みだ。大きな音をたてないようゆっくり玄関の扉を施錠して外に出る。丸喜に気づかれないよう距離をとって後をつける。
まず丸喜は四軒茶屋で電車に乗った。人ごみにまぎれながら同じ電車の隣の車両に乗り込む。
「やっぱり人と会うんだ。じゃなきゃわざわざ電車に乗ったりしない」
「そうかもな。でもだからってウワキにはならないんじゃねーか?」
バッグの中のモルガナは眠そうにくわっと大きな口を開けてあくびをした。
丸喜は渋谷駅で電車を乗り換えて、吉祥寺駅で降りた。その後をやはり人ごみに紛れながら尾行する。丸喜は尾行されていることに気づいた様子もなくいつもの様子で歩いている。
「ん? これ、公園に向かっているんじゃねーか?」
モルガナが言うとおり、丸喜は井の頭公園へ入っていった。そして公園内を散歩している。
「本当にサンポしてるな」
「ああ。でもそれだけだったら俺の同行を拒否するはずがない」
「まあそうだな。けど、オマエの心配しすぎなんじゃねーの?」
モルガナの言う通りなら良いのだけど。モヤモヤを抱えたまま丸喜を追った。
しばらく道なりに歩いていた丸喜だったが、池のほとりのベンチで立ち止まった。
ストレッチをしながらキョロキョロしている。やはり誰かと待ち合わせしているようだ。
木陰からそっと見守っていると、丸喜は笑顔で手を振った。丸喜が向いている方向をたどった。
「あれは……!」
向こうから走ってきた人物はポニーテールを揺らしていた。丸喜と同じようにトレーニングウェアを身につけている。それはまぎれもなく芳澤だった。
PR
No.342|オフ活動|Comment(0)|Trackback