シリーズ4冊目。
あらすじ
主人公(鳴上悠)への想いを自覚した陽介はデートに頻繁に誘われるようになるが、悠がそれ以来コミュ活動をやめてしまったことを心配する。
悠への告白の返事や、その後の性事情など。
「The magician」の桂木が陽介の相談役として登場しています。
◆A5/26p/R18(エロ要素は薄めです)/オンデマ印刷/300円(イベント価格)
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続き↓にてサンプルをUPしています。
時間がなくて、小説にしては薄い本になってしまいましたが、けっこう急展開な感じの中身の濃い内容になった気がします。
自分の中では今回と次回作がシリーズを通してのクライマックスだと思ってます。
[0回]
悠から最近頻繁に誘いが来るようになった。今日は沖奈で待ち合わせして映画を観る約束だ。「わざわざ沖奈で待ち合わせしなくても一緒に行けばいいんじゃねえの?」待ち合わせ場所に来た悠にそう問いかけると、悠は真剣な表情で答えた。「これはデートだから」カーッと頬が熱くなった。以前、電話口でもデートだと言われた気がするけど、そのときは女の子同士で出かけるときに使う類のものだと思っていたのだ。急に意識してしまって、最初ぎこちなかったが、悠が上映までの空き時間にゲーセンやウインドウショッピングを提案してくれたり、会話のきっかけを与えてくれたりしたので、いつのまにかリラックスして話せていた。こいつ何気にエスコート慣れしてないか、とも思って聞いてみたら、「ああ、たぶん海老原とか天城の買い物に付き合ったりしたからじゃないかな」などと爆弾発言を落とされた。「おま…それこそデートだろ!」「相手がどういうつもりかなんて俺が決められないよ。少なくとも俺にとっては二人のは付き添いだ。そして今日は俺にとってはデート、です」そんな風に言われると、キスの件以来、悠のことを意識せずにはいられないというのに、すごく困る。映画館に恋愛もののタイトルが並んでるのを見たときには、小西先輩を映画に誘ったときのことを思い出して切なくなったりした。(犯人、捕まえたんだから、もう何も考えなくていいんだよな)自分のこと、まだちゃんと向き合えてないような気がする。けど、忙しい悠がせっかく誘ってくれるんだから。悠がいる一年は短いのだから。そう自分に言い聞かせた。映画を観終わって二人で沖奈駅前の喫茶店に入ると、どこからか電話が鳴った。どうやら悠のケータイだ。「ごめん、電源を切り忘れてた」相棒はケータイを見ると着信を気にせず切ってしまい、電源を落とした。「出なくていいのか?俺なら気にしないぜ」「うん、里中からだったけど、緊急の用件じゃないだろうし」「え…?」背中がひやりとした。「もう、事件は解決したんだ。大丈夫だろう?俺は陽介との時間を今は大切にしたい」「そ、だよな……」なぜだろう。悠が言ってることは間違ってないと思うのに。その時が初めてだった。悠になにか違和感を感じたのは。悠は緊張した面もちだった。それはそうだ、俺の返事をずっと待っていて、ついにその返事を聞くのだから。「返事、待たせてごめん。けど、その前にお前に聞きたいことがあるんだけど」「うん?」「お前、最近、他の奴とのつき合いがあんまないんじゃないのか。ほら、俺とほぼ毎日過ごしているしさ」「それはいいんだ。陽介と一緒にいられれば。事件も解決できたし、もう必要ないだろ」「…え?」思わず耳を疑った。「そ、の言い方じゃ、まるで事件を解決するために、他の奴とつき合ってたってたって…」 悠は平然とした顔で頷いた。「そうだよ。すべては陽介のためだから。事件を解決するために、ペルソナの力は必要不可欠だったから」「……っ」俺は一体悠のなにを見ていたのだろう。悠はこんな奴だったか?こいつのどこが好きだったのか。「みんな、自分と向き合うために俺が必要だったから。陽介もそうじゃないの?自分と向き合うために、俺を利用した」言われて、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。言葉が出なかった。ちがう、とはっきり否定できなかった。「陽介だけならいいんだ。陽介になら利用されたってなんだって許すよ。けど他の奴とはもう、そういう利用し合う関係は疲れたんだ。俺の自由にさせてほしい」「悠…っな、んで」悠の腕にすがりついた。夏なのにひんやりした肌。不思議そうに見つめている目。こんな奴だっただろうか。いや、最初からそうだったわけじゃない。そうじゃなかったはずだ。「俺にクローバーの冠を作ってくれたときもそうだった?」あのとき、俺の幸せを願ってくれた気持ちも嘘だっただろうか。一緒に幸せになろうって言ってくれたことも。「…そんなこともあったね。なんだか遠い昔の話みたいだ」「………」いつの間にか悠が知らない人みたいになっていた。たぶん、原因は俺だ。目に熱いものがこみ上げてきた。けど、俺が泣くのはきっと違う。「陽介、そんなこと聞いて、どうしたんだ」「俺、お前とはつき合えない」初めて悠の表情が変わった。「な、んで…」「俺、お前のこと、クローバーの冠を作ってくれた頃は結構好きだったよ。けど、今の悠は好きになれない。俺、ジュネスと商店街の確執もあって八十稲羽に来てからまともに友達作れなかったしさ、最初は打算があってお前と友達付き合いしてた部分ももしかしたらあったかもしれない。けど、それだけじゃなかったよ。お前に興味があったから、もっとお前と話がしたいから、お前が好きだから、一緒にいたかったんだ」「陽介…」「他の奴もさ、同じだと思う。つーか、基本的にそうだろ。好きだから一緒にいる。好きだから相手の力になりたい。俺は、お前のこと、特別だよ。他にはないし、一生もんだと思ってる。でも、だからこそ、今はお前と距離を置く」「陽介、嫌だ、俺は…っ」抱きしめられて、しかし抱きしめ返すことはしなかった。そっと胸を押して離れようとすると。「陽介…!」強いまなざしで見つめられて、唇をなかば無理矢理に奪われた。悠の舌が口内にねじ込まれて、舌同士が絡み合った。「ん、ふ、…ぅ…ゃだっ」胸を手のひらで強く押して突き飛ばした。よろめく悠の頬を殴って、胸ぐらを掴んだ。「しっかりしろよ!お前、どうしちまったんだよ!」「陽介…」「お前がしっかりしてないと、俺…」どこに行っていいのかわからなくなる。怖いんだ。お前という光が道を照らしてくれないと。「しばらく距離をおこう。お互い連絡はナシな」「……………」悠は黙ったまま、放心したように俺を見ていた。そんな悠を見ていられなくて、俺は走って逃げた。]
「はあ…またやっちまった…」相棒だ仲間だと口では言いながら、決してそれだけでは満足できてないのだ。悠と付き合わないと断ったのは俺の方だ。悠の目を覚まさせるために必要なことだったから、後悔はない。でも、今さらやっぱり好きだから付き合って、なんて都合が良すぎる。「だいたい、あいつの周りには可愛い女子や綺麗な人がいっぱいいるんだ。俺のことなんて、とうに…」最近は病院の清掃のバイトでナースさんとも仲良くなったようだ。夜にお互いバイト帰りに商店街でばったり遭った。その時の悠の服からは女物の香水の甘い香りがして、ただの知り合いではないのは容易に想像できて、胸がズキズキ痛くなった。悠は「病院であの人に会っても陽介は半径3メートル以内に近づいちゃダメだ。小夜子さん、ほんと悪魔だから…」なんて言っていたから、悠も俺を近づかせたくないくらい本気でその人のことが好きになっているのかもしれない。「…出るか」虚しさに襲われて、風呂の栓を抜いて、湯を捨てた。こんな風に心にも捨てる場所があれば苦しむことはないのに。「いっそのこと、エッチしちまったら、気持ちもスッキリすんのかな…」自分の行き場のない想いをどうにか昇華できたら、悠への想いを断ち切れるのかもしれない。PR