お知らせ&ペーパーSS「盗みたい心」
2019/01/30(Wed)20:38
アナコン10参加された方、お疲れ様でした。
本をお手にとっていただいたり、声をかけて下さったり、差し入れをいただいたり、本当に楽しいイベントでした。有難うございましたー!クマネックレスをここぞとばかりに自慢してしまいましたw
自家通販で新刊の「ジュネシックランドで愛を叫べ」を追加しました。
良かったら右→の通販リンクからどうぞ。
とらのあなで委託販売していただいているものもあります。
今回の新刊の続きものになる話をペーパーで書きました。
続きものですが、単品でも読めると思います。
ストーリーネタバレはないと思います。…たぶん大丈夫。
蓮君の名前で思いっきりくさかんむりが抜けてますが、本の方も間違っていたことに後で気づいたのでそのまま統一しました;;自宅主ということで勘弁してください。
下↓のつづきリンクからどうぞ。
「盗みたい心」
◆P4主人公(鳴上 悠)×花村陽介メイン
P5主人公(雨宮 連)×花村陽介もあり
◆PQ2エンディング後の現実世界の話
◆「ジュネシックランドで愛を叫べ」の後日談。
読了していなくても読める内容
◆PQ2ストーリーネタバレなし
◆全年齢向け
店番を任されたがルブランは今日も閑散としていて客も途切れた今、怪盗団の今後のことを考えるのにはちょうど良かった。モルガナも二階で休んでいるし、ひとり店内のBGMを聴きながら考えごとに耽っていた。
すると、ドアベルが鳴った。
「いらっしゃい」
入ってきた男は初めて見る男性客だった。パッと見ただけで目を惹く、華やかな雰囲気のある青年だ。
ハニーブラウンの髪に少し垂れた甘い瞳、パーカーと細身のカラージーンズが良く似合っている。俺より年上のように見える。カジュアルな身なりからして大学生だろうか。
あまりジロジロ見すぎただろうか。向こうも何か言いたそうな顔で俺を見ている。
「今日はいつものマスターじゃないんだ。…ええっと、席ってどこでも良いっすか?」
「ええ、どうぞ」
横を通った時、ふわりと良い香りがした。何かフレグラスをつけているんだろうか。爽やかで甘さもあって、彼に良く合っている。
一番ドアに近いボックス席に座ると、彼のスマホが鳴った。音にびっくりして、慌ててマナーモードに切り替えた。華やかな見た目とは対照的に、意外と真面目な性格みたいだ。メッセージの着信音だったようで、スマホを見ると整った顔がとたん、ふにゃりと緩んだ。甘い瞳でそのメッセージを大事そうに指で撫でた。
そしてひと言ひと言打ったり消したり、また打ったりと、真剣な顔で大事に返信している。きっと大切な恋人からなんだろう。
「お水とおしぼり、ここに置いておきます。注文が決まったら声をかけてください」
メッセージに夢中になっていた彼は俺の声かけにびっくりしたのか、「っひゃい」と声が裏返った声を出した。顔を上げた彼は、すぐにぼっと顔を赤くした。綺麗なだけでなく、表情がクルクルとよく変わって、なんだか目が離せない。
俺はいつの間にか笑っていたらしい。彼は拗ねたような恥ずかしそうな何とも言えない表情を浮かべた。
が、すぐ真剣な表情になった。
そして小声で俺に問いかけた。
「…あのさ、俺らって、どっかで会ったことない?」
密やかな声、そして上目遣いにドキリとした。同性だが期待のような感情が湧き上がった。女性が好きだが、彼とだったら知らない世界に足を踏み入れるのも悪くないと思える。むしろ…
テーブルに手を置いて、彼の耳元で尋ねてみた。
「それってナンパ?」
彼は「はっ?ちがっ」と急に焦った顔で否定し始めた。
思わず噴き出してしまうと、彼は顔を真っ赤にして、「と、年上をからかうなっつーの! たぶん高校生だろ?」と聞かれて、素直に頷いた。
「名前を聞いても? あと、この近所に住んでる?」
調子に乗って尋ねてみると、彼は横を向いて頬を指で掻いた。さすがに教えてくれないか。そう思ったが、彼は真っ直ぐに俺を見て、手を差し出した。
「俺は花村陽介。四軒茶屋に住んでいて、最近この店のコーヒーのファンになったんだ。よろしくな。って言ってもヘンな意味じゃねーからな」
見た目は都会っぽい感じの人だけど、話してみると、素直な好青年だった。話してみるとどんどん興味が湧いてくる。
「よろしく、花村。俺は雨宮連だ。ヘンな意味でも花村だったら大歓迎だ」
「タメ口かよ。まあ、良いけどさ。イヤイヤ、だからヘンな意味はお断りだって」
なんだか彼との他愛ないやりとりが楽しくなってしまう。
すると、ドアベルが来客を告げた。
「いらっしゃい」
入ってきた客はやはり見たことのない男性だった。花村とはまたタイプの違う美形だ。姿や顔形が整っているだけでなく、見た人の視線を釘付けにしてしまうようなオーラがある。
店内を見回して、花村を見つけるなり、その端正な顔が花のように綻んだ。
「陽介。待たせたな」
「相棒。いや全然。俺も今来たばっかだし」
手を上げた花村も嬉しそうで、その表情はスマートフォンのメッセージを見た時と同じように甘くて幸せそうだ。
なるほど、彼が恋人というわけか。同性同士だが不思議とお似合いだと思った。
俺が花村の傍にいたから、会話中だと思ったのだろう。少し申し訳なさそうに俺に会釈した。
「すまない。会話中だったか」
「ええ、花村にナンパされて仲良くなってました」
「…ナンパ?」
彼が花村を振り返ると、慌てて花村はホールドアップした。
「ちょっ、誤解だっつーの!」
一から説明されて、眉根を寄せる「相棒」君は、俺を振り返った。前髪から覗き見える眼光が鋭くて、傍目から見ても嫉妬しているのが丸わかりだった。
内心、笑いを噛み殺すのに必死だ。美人で愛嬌のある男、そしてクールそうに見えるが、彼のこととなると途端に熱くなるその恋人。なるほどこのふたり、本当に良い相棒みたいだ。更に火に油を注いだら一体どうなるのか興味が湧いてきた。
「あ、こいつは鳴上悠。で、彼が雨宮」
「雨宮連です。よろしく」
手を差し出すと、鳴上は強張った顔で俺に手を差し出してきた。握手すると、ものすごい力で握られた。正直言って痛い。
「ハハ、男の嫉妬は見苦しいですよ」
痛いのをガマンして笑うと、鳴上の眉根がいっそう険しいものになった。
「まだ注文していなかったな。俺はブレンド。陽介は?」
「え? あ、じゃあ俺も同じのを」
「かしこまりました」
俺をさっさと退散させたいらしい。まあ俺も暇ではないので、コーヒー作りにとりかかる。マスターから習った通りのコーヒーを作って出すと、ふたりは何かビラを見ていた。どうやら映画の広告のようだ。
「映画祭で評判になっていたみたいで、映画館でも上映されることになったんだ」
「へえ、高校生が作ったのか」
見ると、それは俺たち怪盗団の仲間たちで観に行った作品だった。何か色んな感情が湧き上がって、怒りや悲しみに共感し、最後にはスッキリ笑顔になれるような最高の映画だった。
コーヒーをふたりに出すタイミングで声をかけた。
「面白かったですよ。それ」
「お、観に行ったんだ」
俺と花村が映画の話で盛り上がっているのを色んな感情を押し殺した目で見ている鳴上の視線が正直怖い。だけど、同じくらいワクワクする。
「陽介、飲んだだろ? そろそろ出よう」
「んだよ、もうちょっとくらいゆっくりしても良いだろ」
無言で花村に鋭い視線を送っている彼に、花村が頬杖をついて笑った。
「嫉妬される側って、ちょっと気持ちいーな」
「…俺を怒らせたいのか」
「俺の気持ち、ちっとは実感してもらえたんじゃね?」
鳴上は立ち上がり、花村の手を取った。
「…俺がどれだけ陽介のことを愛しているか、もっと思い知らせないとわかってもらえないみたいだな」
すると花村がふわりと笑った。その瞳にはこれから起こることへの期待、畏れ、そしてある種の色を孕んでいた。その瞳がとても綺麗で、パレスで見かけるキラキラ光る宝石よりも美しいと感じた。
その瞳を俺に向けさせたい、その心を奪ってみたい。確かな衝動が胸に湧き起こった。
会計をするために鳴上がレジの前に立った。渋々俺もレジに立ったが、そのまま帰すのも惜しいと思った。
「俺、この上に住んでいるんだ」
会計をしながら花村に声をかけた。今の彼に俺の声がどれだけ響いているかわからない。だけど、マイナスからのスタートも悪くない。
レシートの裏にナンバーを書きしるす。そしてそれを花村さんに手渡した。手の中を指で優しく擦った。
「逢いたかったらいつでも連絡してくれ」
キョトンとした彼はやがてふっと息で笑った。
「こいつの前でそんなこと言えるなんてお前、大したヤツだな」
「色々経験してきたから、もう怖いもの知らずなんだ」
その時の鳴上の顔と言ったら最高だった。
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今回の新刊の続きものになる話をペーパーで書きました。
続きものですが、単品でも読めると思います。
ストーリーネタバレはないと思います。…たぶん大丈夫。
蓮君の名前で思いっきりくさかんむりが抜けてますが、本の方も間違っていたことに後で気づいたのでそのまま統一しました;;自宅主ということで勘弁してください。
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「盗みたい心」
◆P4主人公(鳴上 悠)×花村陽介メイン
P5主人公(雨宮 連)×花村陽介もあり
◆PQ2エンディング後の現実世界の話
◆「ジュネシックランドで愛を叫べ」の後日談。
読了していなくても読める内容
◆PQ2ストーリーネタバレなし
◆全年齢向け
店番を任されたがルブランは今日も閑散としていて客も途切れた今、怪盗団の今後のことを考えるのにはちょうど良かった。モルガナも二階で休んでいるし、ひとり店内のBGMを聴きながら考えごとに耽っていた。
すると、ドアベルが鳴った。
「いらっしゃい」
入ってきた男は初めて見る男性客だった。パッと見ただけで目を惹く、華やかな雰囲気のある青年だ。
ハニーブラウンの髪に少し垂れた甘い瞳、パーカーと細身のカラージーンズが良く似合っている。俺より年上のように見える。カジュアルな身なりからして大学生だろうか。
あまりジロジロ見すぎただろうか。向こうも何か言いたそうな顔で俺を見ている。
「今日はいつものマスターじゃないんだ。…ええっと、席ってどこでも良いっすか?」
「ええ、どうぞ」
横を通った時、ふわりと良い香りがした。何かフレグラスをつけているんだろうか。爽やかで甘さもあって、彼に良く合っている。
一番ドアに近いボックス席に座ると、彼のスマホが鳴った。音にびっくりして、慌ててマナーモードに切り替えた。華やかな見た目とは対照的に、意外と真面目な性格みたいだ。メッセージの着信音だったようで、スマホを見ると整った顔がとたん、ふにゃりと緩んだ。甘い瞳でそのメッセージを大事そうに指で撫でた。
そしてひと言ひと言打ったり消したり、また打ったりと、真剣な顔で大事に返信している。きっと大切な恋人からなんだろう。
「お水とおしぼり、ここに置いておきます。注文が決まったら声をかけてください」
メッセージに夢中になっていた彼は俺の声かけにびっくりしたのか、「っひゃい」と声が裏返った声を出した。顔を上げた彼は、すぐにぼっと顔を赤くした。綺麗なだけでなく、表情がクルクルとよく変わって、なんだか目が離せない。
俺はいつの間にか笑っていたらしい。彼は拗ねたような恥ずかしそうな何とも言えない表情を浮かべた。
が、すぐ真剣な表情になった。
そして小声で俺に問いかけた。
「…あのさ、俺らって、どっかで会ったことない?」
密やかな声、そして上目遣いにドキリとした。同性だが期待のような感情が湧き上がった。女性が好きだが、彼とだったら知らない世界に足を踏み入れるのも悪くないと思える。むしろ…
テーブルに手を置いて、彼の耳元で尋ねてみた。
「それってナンパ?」
彼は「はっ?ちがっ」と急に焦った顔で否定し始めた。
思わず噴き出してしまうと、彼は顔を真っ赤にして、「と、年上をからかうなっつーの! たぶん高校生だろ?」と聞かれて、素直に頷いた。
「名前を聞いても? あと、この近所に住んでる?」
調子に乗って尋ねてみると、彼は横を向いて頬を指で掻いた。さすがに教えてくれないか。そう思ったが、彼は真っ直ぐに俺を見て、手を差し出した。
「俺は花村陽介。四軒茶屋に住んでいて、最近この店のコーヒーのファンになったんだ。よろしくな。って言ってもヘンな意味じゃねーからな」
見た目は都会っぽい感じの人だけど、話してみると、素直な好青年だった。話してみるとどんどん興味が湧いてくる。
「よろしく、花村。俺は雨宮連だ。ヘンな意味でも花村だったら大歓迎だ」
「タメ口かよ。まあ、良いけどさ。イヤイヤ、だからヘンな意味はお断りだって」
なんだか彼との他愛ないやりとりが楽しくなってしまう。
すると、ドアベルが来客を告げた。
「いらっしゃい」
入ってきた客はやはり見たことのない男性だった。花村とはまたタイプの違う美形だ。姿や顔形が整っているだけでなく、見た人の視線を釘付けにしてしまうようなオーラがある。
店内を見回して、花村を見つけるなり、その端正な顔が花のように綻んだ。
「陽介。待たせたな」
「相棒。いや全然。俺も今来たばっかだし」
手を上げた花村も嬉しそうで、その表情はスマートフォンのメッセージを見た時と同じように甘くて幸せそうだ。
なるほど、彼が恋人というわけか。同性同士だが不思議とお似合いだと思った。
俺が花村の傍にいたから、会話中だと思ったのだろう。少し申し訳なさそうに俺に会釈した。
「すまない。会話中だったか」
「ええ、花村にナンパされて仲良くなってました」
「…ナンパ?」
彼が花村を振り返ると、慌てて花村はホールドアップした。
「ちょっ、誤解だっつーの!」
一から説明されて、眉根を寄せる「相棒」君は、俺を振り返った。前髪から覗き見える眼光が鋭くて、傍目から見ても嫉妬しているのが丸わかりだった。
内心、笑いを噛み殺すのに必死だ。美人で愛嬌のある男、そしてクールそうに見えるが、彼のこととなると途端に熱くなるその恋人。なるほどこのふたり、本当に良い相棒みたいだ。更に火に油を注いだら一体どうなるのか興味が湧いてきた。
「あ、こいつは鳴上悠。で、彼が雨宮」
「雨宮連です。よろしく」
手を差し出すと、鳴上は強張った顔で俺に手を差し出してきた。握手すると、ものすごい力で握られた。正直言って痛い。
「ハハ、男の嫉妬は見苦しいですよ」
痛いのをガマンして笑うと、鳴上の眉根がいっそう険しいものになった。
「まだ注文していなかったな。俺はブレンド。陽介は?」
「え? あ、じゃあ俺も同じのを」
「かしこまりました」
俺をさっさと退散させたいらしい。まあ俺も暇ではないので、コーヒー作りにとりかかる。マスターから習った通りのコーヒーを作って出すと、ふたりは何かビラを見ていた。どうやら映画の広告のようだ。
「映画祭で評判になっていたみたいで、映画館でも上映されることになったんだ」
「へえ、高校生が作ったのか」
見ると、それは俺たち怪盗団の仲間たちで観に行った作品だった。何か色んな感情が湧き上がって、怒りや悲しみに共感し、最後にはスッキリ笑顔になれるような最高の映画だった。
コーヒーをふたりに出すタイミングで声をかけた。
「面白かったですよ。それ」
「お、観に行ったんだ」
俺と花村が映画の話で盛り上がっているのを色んな感情を押し殺した目で見ている鳴上の視線が正直怖い。だけど、同じくらいワクワクする。
「陽介、飲んだだろ? そろそろ出よう」
「んだよ、もうちょっとくらいゆっくりしても良いだろ」
無言で花村に鋭い視線を送っている彼に、花村が頬杖をついて笑った。
「嫉妬される側って、ちょっと気持ちいーな」
「…俺を怒らせたいのか」
「俺の気持ち、ちっとは実感してもらえたんじゃね?」
鳴上は立ち上がり、花村の手を取った。
「…俺がどれだけ陽介のことを愛しているか、もっと思い知らせないとわかってもらえないみたいだな」
すると花村がふわりと笑った。その瞳にはこれから起こることへの期待、畏れ、そしてある種の色を孕んでいた。その瞳がとても綺麗で、パレスで見かけるキラキラ光る宝石よりも美しいと感じた。
その瞳を俺に向けさせたい、その心を奪ってみたい。確かな衝動が胸に湧き起こった。
会計をするために鳴上がレジの前に立った。渋々俺もレジに立ったが、そのまま帰すのも惜しいと思った。
「俺、この上に住んでいるんだ」
会計をしながら花村に声をかけた。今の彼に俺の声がどれだけ響いているかわからない。だけど、マイナスからのスタートも悪くない。
レシートの裏にナンバーを書きしるす。そしてそれを花村さんに手渡した。手の中を指で優しく擦った。
「逢いたかったらいつでも連絡してくれ」
キョトンとした彼はやがてふっと息で笑った。
「こいつの前でそんなこと言えるなんてお前、大したヤツだな」
「色々経験してきたから、もう怖いもの知らずなんだ」
その時の鳴上の顔と言ったら最高だった。
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