スパークペーパーSS
2016/10/17(Mon)20:20
スパークで無料配布したペーパーのSSです。
ちょっと手直ししました。
1:P5の主人公目線の主花SS
2:P5メイドルッキンネタの主花SS
どっちもネタバレはないです。
一個目のSSはなぜかモルガナがいないことにコピーしてから気づきました;笑って読んでいただければ幸いです…。
本分は続き↓からどうぞ~
雨がくれたモノ
今日は雨が降っている。
雨の日は好きだ。雨の日だけの限定商品があったり、勉強に集中できるし良いことが多い。
そして釣り堀でも良いことが起こるらしい。
「らしい」というのは釣り堀の常連客から話に聞いただけで、今日、初めて雨の日に釣りをするからだ。今日こそは釣り堀に住まうヌシ様なるものを釣ってみたい。パーカーを目深に被って気合いを入れる。
擦り餌を釣り針にセットしていると、近くでわあっと歓声が沸いた。
顔を上げると、すぐ隣で大きい魚を釣り上げている人がいる。その魚の大きさといい、たたずまいといい、活きの良さといい、きっとあれがヌシ様なんだろう。俺も是非釣り上げてみたいものだ。
釣り上げた人は周りから賞賛の言葉を受けている。どうやら以前にも釣り上げているようで、「また兄ちゃんか、やるなー!」と向こう側にいるおじさんが目を丸くしている。
プロの釣り人なのかな。そう思ってその人の顔を見ると、想像していたよりずっと若くてびっくりした。
自分よりは少し年上だろうか。モデルでもやってそうな整った容姿で、なんというか、とても雰囲気のある人だ。色素の抜けたようなアッシュグレイの髪、長い前髪から見え隠れしている眼孔は鋭い。落ち着いた雰囲気で、話し方も洗練されている。あの人くらいの年齢になったら自分もそんな風になれるんだろうか。
というか、人のことをジロジロ見てしまうこと自体が失礼だったな。留守になっていた手元を確認し、釣り竿を振って水面に釣り糸を投げ入れた。
ヒットするのを待っていると、ついつい彼に視線を向けてしまう。
彼はヌシ様を釣り針から外して備え付けの網に入れると、慣れた手つきで餌を釣り針につけ、竿を軽く振って水面に投げ入れた。そんな何気ない一連の動作すらも美しい芸術のようだ。
しばらくすると、水面をじっと見たまま、とても小さなため息をついた。その横顔は消えてしまいそうなほど儚げだ。
(ため息………なんで?)
声をかけてみたい。そう思った矢先だった。
「あー、やっぱりここにいた。相棒!」
溌剌とした声が釣り場に響いた。声の主を見ると、ハニーブラウンの髪の男が軽快に走ってやってきた。細身で整った容姿をしているが、彼はモデルというよりはどちらかと言うとアイドルみたいな甘い顔立ちで、親しみのある感じだ。
「陽介……!よく此処がわかったな」
アッシュグレイの彼の連れらしい。だけど約束をしていたわけではないようだ。駈け寄って来るハニーブラウンの男を目を見開いて見つめている。
「だってお前、考えごとをしたい時は大体釣りに行くだろ。うちにある釣り竿はそのままだったから、それなら竿をレンタルできるここに居るかなって思ってさ」
「………連絡もせずにごめん。電車に乗ってからスマートフォン、家に置きっぱなしだったって気づいて」
「ほんと、心配したっつーの。………お前、やっぱ計画潰れたの、ショックだった?」
アッシュグレイの男は再び水面に視線を落とした。
「うん。………今回のこともそうだけど、大人になるたびにこういうことが多くなるのかなって」
その瞳が水面のようにゆらゆら揺れて。思わずこちらの胸が締め付けられるようだ。
ハニーブラウンの男が彼の隣に立って背中をぽんぽんと軽くたたいてあやした。
「みんな、他のことを優先してでもお前に会いたいって気持ちは一緒だよ。俺がまた、何度だってセッティングしてやるからさ、元気出せよ」
するとアッシュグレイの彼がふわりと笑った。
(う、わ…………!)
さっき釣り場の人たちに見せた笑顔じゃない。なんていうか、愛おしさを瞳いっぱいににじませた、特別な人にだけさらけ出すような…むき出しの笑顔だった。
「ありがとう…陽介。帰る準備をするから一緒に帰ろう」
「おう!」
ふたりは和気藹々とした様子で釣り道具を片づけ、出口があるこちらに向かって歩いてきた。
すれ違う時、アッシュグレイの彼と目が合った。一瞬の間があってから会釈をされた。
「お騒がせしました。目当ての魚、釣れるといいですね」
「あ…いえ。どうも」
気の利いた言葉もかけられず、そう会釈を返して、ただただふたりの背中を見送った。ふたりは小声で囁き合っている。
「知り合い?」
「いや、初めて会った人だけど……なんでだろう、初めて会った気がしなかったな」
「んだよ、それ。ナンパかっつの」
ほんの一瞬の出来事だった。
ハニーブラウンの髪を揺らしている彼が唇を尖らせていると、その突き出た唇にアッシュグレイの彼が唇を押し付けた。
林檎みたいにみるみる赤くなるハニーブラウン。そして楽し気に微笑むアッシュグレイ。
「ふふ…妬いた?」
「ばっ…おま、こんなトコで…ッ」
「誰も見てないって」
すいません、思いっきり見てしまいました。なんか見ている俺まで顔が熱くなってしまう。…えーと、つまりそういう関係なんだよな。肩で小突き合って、視線を交わし、笑い合う。そんなふたりを見るとそう確信する。
都会にはいろんな人がいるな……。思わず大きな息を吐いた。
不思議とすがすがしい気分だった。気がつけば口元に笑みが浮かんでいた。
自分の境遇を真っ直ぐ受け止めてくれて、理不尽への憤りとか悔しさとか、そういう行き場のない感情をわかってくれる人がいる。
だからだろうか。絆で結ばれた彼らのことも応援したくなるのは。
彼も言っていたけど、俺も不思議と初めて会った気がしなかった。だからきっとどこかでまた会える気がする。
「兄ちゃん、さっきから竿、引いてるよ」
「え?………わっ」
近くの人に肩をたたかれて自分の竿を見ると、いつの間にかグイグイと今まで感じたことのないようなプレッシャーで引っ張られていた。きっとヌシ様だ。っていうか、ヌシ様って同じ場所に何匹もいるものなのか?そう思わずにはいられなかったけど、とにかくリールを巻きながらたぐり寄せた。
だけど、左右にものすごい力で抵抗されたとたん糸がぷっつりと切れて、あっと言う間に餌を持ってかれて逃げられてしまった。
「あーあ、残念だったな、兄ちゃん」
「あはは………」
思わず天を仰いだ。
気がつくと雨がやんでいた。
メイドさんと一緒
「陽介、俺のお願いを聞いてくれるか?」
テーブルで向かい合って食事をした後、唐突に相棒がそう切り出した。なぜか両肘をテーブルについて手の甲に顎を乗せたポーズで、真剣な表情で俺を見ている。
「な…なに?」
「まずはこれを見てくれ」
相棒がテーブルの上にすっと出したのは一枚のチラシ。手にとって見ると、そこには可愛いメイドさんたちが様々なポーズをとっている。『メイドさんが貴方の部屋でご奉仕しちゃいます♪』などと丸っこい書体で書かれている。
「いやだ」
即答すると、相棒がガタッと音をたてて「なぜだー?まだ用件も言ってないのに!」と立ち上がった。
「いや、どうせこういう服着てイロイロしようってんだろ」
「さすが俺の相棒……!言わずとも理解するとは…!」
「お前のコスプレ好きにはさんざん付き合わせられたからな……。持ち上げてもやらねーぜ?」
拒否権を発動したが、相棒は余裕の笑みを浮かべている。くそっ…嫌な予感しかしない。なぜか相棒は自分のスマートフォンを取り出した。そして何か音声を再生しだした。
『相棒っ一生のお願いだ!バイトのピンチヒッター入ってくんねえ?』
これは。間違いなく俺の声だ。そう、急に休んだバイトの穴がどうしても埋まらなくて、相棒のお願いした時の音声だ。つーかどうしてこんなモノを録音してるわけ?問い質したいけど今は俺の立場が悪すぎる。
「この後、こうも言ったよな?『お礼になんでもする』って。なあ、陽介?」
「うっ……まさかこんなくっだらねーお願いごとなんて思ってもみなかったぜ…!」
「さあ、陽介どうする?着るか、着ないか?」
ファイナルアンサー、と促されて俺にノーと言える権利は一切なかった。
すでに用意されていたフリフリの膝丈メイド服を着せられ、相棒の指導のもと、わざわざ玄関から入り直して「派遣されてやってきました、花村陽介ちゃんです♪ご主人さまのメイドとして今日一日、精一杯ご奉仕させていただきますニャン!」と小芝居までする羽目になった。寒い、寒すぎるだろ…!
相棒の見てる中、メイド服のまま部屋を掃除したり、肩を揉んでマッサージしたりすると、相棒は大変ご満悦の様子だった。
「俺も着ようか?ご奉仕しようか?」
ワクワクした様子で自分サイズのビッグなメイド服を見せつける相棒。
即座にお断りしました。
ちょっと手直ししました。
1:P5の主人公目線の主花SS
2:P5メイドルッキンネタの主花SS
どっちもネタバレはないです。
一個目のSSはなぜかモルガナがいないことにコピーしてから気づきました;笑って読んでいただければ幸いです…。
本分は続き↓からどうぞ~
雨がくれたモノ
今日は雨が降っている。
雨の日は好きだ。雨の日だけの限定商品があったり、勉強に集中できるし良いことが多い。
そして釣り堀でも良いことが起こるらしい。
「らしい」というのは釣り堀の常連客から話に聞いただけで、今日、初めて雨の日に釣りをするからだ。今日こそは釣り堀に住まうヌシ様なるものを釣ってみたい。パーカーを目深に被って気合いを入れる。
擦り餌を釣り針にセットしていると、近くでわあっと歓声が沸いた。
顔を上げると、すぐ隣で大きい魚を釣り上げている人がいる。その魚の大きさといい、たたずまいといい、活きの良さといい、きっとあれがヌシ様なんだろう。俺も是非釣り上げてみたいものだ。
釣り上げた人は周りから賞賛の言葉を受けている。どうやら以前にも釣り上げているようで、「また兄ちゃんか、やるなー!」と向こう側にいるおじさんが目を丸くしている。
プロの釣り人なのかな。そう思ってその人の顔を見ると、想像していたよりずっと若くてびっくりした。
自分よりは少し年上だろうか。モデルでもやってそうな整った容姿で、なんというか、とても雰囲気のある人だ。色素の抜けたようなアッシュグレイの髪、長い前髪から見え隠れしている眼孔は鋭い。落ち着いた雰囲気で、話し方も洗練されている。あの人くらいの年齢になったら自分もそんな風になれるんだろうか。
というか、人のことをジロジロ見てしまうこと自体が失礼だったな。留守になっていた手元を確認し、釣り竿を振って水面に釣り糸を投げ入れた。
ヒットするのを待っていると、ついつい彼に視線を向けてしまう。
彼はヌシ様を釣り針から外して備え付けの網に入れると、慣れた手つきで餌を釣り針につけ、竿を軽く振って水面に投げ入れた。そんな何気ない一連の動作すらも美しい芸術のようだ。
しばらくすると、水面をじっと見たまま、とても小さなため息をついた。その横顔は消えてしまいそうなほど儚げだ。
(ため息………なんで?)
声をかけてみたい。そう思った矢先だった。
「あー、やっぱりここにいた。相棒!」
溌剌とした声が釣り場に響いた。声の主を見ると、ハニーブラウンの髪の男が軽快に走ってやってきた。細身で整った容姿をしているが、彼はモデルというよりはどちらかと言うとアイドルみたいな甘い顔立ちで、親しみのある感じだ。
「陽介……!よく此処がわかったな」
アッシュグレイの彼の連れらしい。だけど約束をしていたわけではないようだ。駈け寄って来るハニーブラウンの男を目を見開いて見つめている。
「だってお前、考えごとをしたい時は大体釣りに行くだろ。うちにある釣り竿はそのままだったから、それなら竿をレンタルできるここに居るかなって思ってさ」
「………連絡もせずにごめん。電車に乗ってからスマートフォン、家に置きっぱなしだったって気づいて」
「ほんと、心配したっつーの。………お前、やっぱ計画潰れたの、ショックだった?」
アッシュグレイの男は再び水面に視線を落とした。
「うん。………今回のこともそうだけど、大人になるたびにこういうことが多くなるのかなって」
その瞳が水面のようにゆらゆら揺れて。思わずこちらの胸が締め付けられるようだ。
ハニーブラウンの男が彼の隣に立って背中をぽんぽんと軽くたたいてあやした。
「みんな、他のことを優先してでもお前に会いたいって気持ちは一緒だよ。俺がまた、何度だってセッティングしてやるからさ、元気出せよ」
するとアッシュグレイの彼がふわりと笑った。
(う、わ…………!)
さっき釣り場の人たちに見せた笑顔じゃない。なんていうか、愛おしさを瞳いっぱいににじませた、特別な人にだけさらけ出すような…むき出しの笑顔だった。
「ありがとう…陽介。帰る準備をするから一緒に帰ろう」
「おう!」
ふたりは和気藹々とした様子で釣り道具を片づけ、出口があるこちらに向かって歩いてきた。
すれ違う時、アッシュグレイの彼と目が合った。一瞬の間があってから会釈をされた。
「お騒がせしました。目当ての魚、釣れるといいですね」
「あ…いえ。どうも」
気の利いた言葉もかけられず、そう会釈を返して、ただただふたりの背中を見送った。ふたりは小声で囁き合っている。
「知り合い?」
「いや、初めて会った人だけど……なんでだろう、初めて会った気がしなかったな」
「んだよ、それ。ナンパかっつの」
ほんの一瞬の出来事だった。
ハニーブラウンの髪を揺らしている彼が唇を尖らせていると、その突き出た唇にアッシュグレイの彼が唇を押し付けた。
林檎みたいにみるみる赤くなるハニーブラウン。そして楽し気に微笑むアッシュグレイ。
「ふふ…妬いた?」
「ばっ…おま、こんなトコで…ッ」
「誰も見てないって」
すいません、思いっきり見てしまいました。なんか見ている俺まで顔が熱くなってしまう。…えーと、つまりそういう関係なんだよな。肩で小突き合って、視線を交わし、笑い合う。そんなふたりを見るとそう確信する。
都会にはいろんな人がいるな……。思わず大きな息を吐いた。
不思議とすがすがしい気分だった。気がつけば口元に笑みが浮かんでいた。
自分の境遇を真っ直ぐ受け止めてくれて、理不尽への憤りとか悔しさとか、そういう行き場のない感情をわかってくれる人がいる。
だからだろうか。絆で結ばれた彼らのことも応援したくなるのは。
彼も言っていたけど、俺も不思議と初めて会った気がしなかった。だからきっとどこかでまた会える気がする。
「兄ちゃん、さっきから竿、引いてるよ」
「え?………わっ」
近くの人に肩をたたかれて自分の竿を見ると、いつの間にかグイグイと今まで感じたことのないようなプレッシャーで引っ張られていた。きっとヌシ様だ。っていうか、ヌシ様って同じ場所に何匹もいるものなのか?そう思わずにはいられなかったけど、とにかくリールを巻きながらたぐり寄せた。
だけど、左右にものすごい力で抵抗されたとたん糸がぷっつりと切れて、あっと言う間に餌を持ってかれて逃げられてしまった。
「あーあ、残念だったな、兄ちゃん」
「あはは………」
思わず天を仰いだ。
気がつくと雨がやんでいた。
メイドさんと一緒
「陽介、俺のお願いを聞いてくれるか?」
テーブルで向かい合って食事をした後、唐突に相棒がそう切り出した。なぜか両肘をテーブルについて手の甲に顎を乗せたポーズで、真剣な表情で俺を見ている。
「な…なに?」
「まずはこれを見てくれ」
相棒がテーブルの上にすっと出したのは一枚のチラシ。手にとって見ると、そこには可愛いメイドさんたちが様々なポーズをとっている。『メイドさんが貴方の部屋でご奉仕しちゃいます♪』などと丸っこい書体で書かれている。
「いやだ」
即答すると、相棒がガタッと音をたてて「なぜだー?まだ用件も言ってないのに!」と立ち上がった。
「いや、どうせこういう服着てイロイロしようってんだろ」
「さすが俺の相棒……!言わずとも理解するとは…!」
「お前のコスプレ好きにはさんざん付き合わせられたからな……。持ち上げてもやらねーぜ?」
拒否権を発動したが、相棒は余裕の笑みを浮かべている。くそっ…嫌な予感しかしない。なぜか相棒は自分のスマートフォンを取り出した。そして何か音声を再生しだした。
『相棒っ一生のお願いだ!バイトのピンチヒッター入ってくんねえ?』
これは。間違いなく俺の声だ。そう、急に休んだバイトの穴がどうしても埋まらなくて、相棒のお願いした時の音声だ。つーかどうしてこんなモノを録音してるわけ?問い質したいけど今は俺の立場が悪すぎる。
「この後、こうも言ったよな?『お礼になんでもする』って。なあ、陽介?」
「うっ……まさかこんなくっだらねーお願いごとなんて思ってもみなかったぜ…!」
「さあ、陽介どうする?着るか、着ないか?」
ファイナルアンサー、と促されて俺にノーと言える権利は一切なかった。
すでに用意されていたフリフリの膝丈メイド服を着せられ、相棒の指導のもと、わざわざ玄関から入り直して「派遣されてやってきました、花村陽介ちゃんです♪ご主人さまのメイドとして今日一日、精一杯ご奉仕させていただきますニャン!」と小芝居までする羽目になった。寒い、寒すぎるだろ…!
相棒の見てる中、メイド服のまま部屋を掃除したり、肩を揉んでマッサージしたりすると、相棒は大変ご満悦の様子だった。
「俺も着ようか?ご奉仕しようか?」
ワクワクした様子で自分サイズのビッグなメイド服を見せつける相棒。
即座にお断りしました。
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