微睡ボーダーライン
2017/04/24(Mon)20:16
ツイッターのお題「居眠り」に遅刻投稿です。
お題通り自分が寝てしまってどうする…。
本文は続きからどうぞ。
ひとのうちに来て携帯ゲーム機を持ち込んで遊ぶのは構わない。
クマを家に迎えたのもあって、あんまりひとりでくつろげる時間がないかもしれないし。
それに俺の部屋でくつろいでくれて、それだけ心を許してくれてるのだと思うと嬉しい気持ちもある。
そう思ってこっちはこっちで本の続きを読んでいたんだけど、だからと言って。
「人の部屋で無防備に寝られるのはな………」
折り畳んだ布団の上に頭を乗せて、ゲーム機を胸に抱えて横向きにすやすやと眠っている表情はあどけない。普段あんまりじっとは見られないけれど、こんな時ならゆっくり観察できる。
甘く整った顔立ちをしている。だけどそれよりもこの顔がぱあっと笑顔で輝いたり、拗ねて口をとがらせたり、真剣な横顔を見せたりと、コロコロ変わる表情に弱いんだと思う。
「陽介」
声をかけるが、反応はない。半開きになっている唇に釘付けになる。白い歯や覗き見える歯ぐきのピンク色に誘われる。
「あんまり無防備だと襲うぞ」
ゆっくりと顔を近づけた。
もうあと少しで、唇と唇が触れ合いそうになった時。
「ん………」
半開きになった陽介の目と合った。
思わず距離をとろうとした、が。
「あいぼー………」
とろんと垂れ目がちな瞳に見つめられて、やがてふにゃりとゆるめた頬で微笑まれた。
なんだ、この可愛い生き物は。ドッドッと心臓の音が高鳴っているのが自分でもわかる。
早くこの生き物を自分だけのものにしないと、誰かに奪われるんじゃないか。本能のようなものが向こう側から扉を開けろと音を立てて急き立てる。
「………ぇ………?あっ、ごめ、ちょっと今寝ぼけてた………」
急に目の焦点が合った陽介が慌てふためいて起きあがった。
「い、いや………」
なんと言っていいのかわからなくて、こっちまで照れてしまう。
「………なんか夢でも見てた?」
「ゆっ、夢なんて見てねーよ!?」
誤魔化しているのは明白だったが、こっちも寝込みを襲おうとした身だ。お互い様というやつだ。だからそれ以上は追求できなかった。
気心の知れた相棒で、それと同時に一番の愛しい人で。
どこまで踏み込んでいいものか、陽介との距離がつかめなかった。
やさしい風が吹いている。
大地の上で微睡んでいた。
とてもいい匂いがする。なんだっけ、この匂い。
ああ、そうだ。これは相棒のにおいだ。シャンプーとかボディーソープとか、相棒自身の匂いが入り交じったやつ。俺の好きな匂い。
いつの間にか相棒が俺の横に寝そべっていて、ふわりと抱きしめてくれた。とても優しい眼差しで俺を呼んだ。
「陽介」
その声が好きで、その眼差しが好きで、いつまでも眺めていたい。
「相棒………」
その端正な顔がゆっくり近づいてきた。ああ、キスされるんだ。そう思って、目を閉じようとした時だった。
不意に気がついた。
ん………俺、相棒の部屋でゲームをしてなかったっけ?
ふとそう気がついて、よく見ると、目の前の相棒は夢じゃなく、現実の相棒だということに気がついた。
「………ぇ………?あっ、ごめ、ちょっと今寝ぼけてた………」
慌てて起き上がると、相棒も身を引いて、口元を手で覆った。
「い、いや………」
あーびっくりした。こいつとキスするとかあるわけないのに。っていうか、なんでそれを自然なことだと俺は思っちまったんだろう。目を瞑って応えようとしてたよな!?
自分で自分がわからなくて、なんだか心臓の辺りがズキズキと痛い。なのにそれが全然嫌じゃない。
「………なんか夢でも見てた?」
そう問われて、かあっと顔が熱くなった。
察しのいい相棒でもまさか、夢の内容までわからないよな…?どうか顔に出ませんように。
「ゆっ、夢なんて見てねーよ!?」
どこからが夢でどこからが現実だっただろう。
それを問いただす勇気は俺にはなかった。
お題通り自分が寝てしまってどうする…。
本文は続きからどうぞ。
ひとのうちに来て携帯ゲーム機を持ち込んで遊ぶのは構わない。
クマを家に迎えたのもあって、あんまりひとりでくつろげる時間がないかもしれないし。
それに俺の部屋でくつろいでくれて、それだけ心を許してくれてるのだと思うと嬉しい気持ちもある。
そう思ってこっちはこっちで本の続きを読んでいたんだけど、だからと言って。
「人の部屋で無防備に寝られるのはな………」
折り畳んだ布団の上に頭を乗せて、ゲーム機を胸に抱えて横向きにすやすやと眠っている表情はあどけない。普段あんまりじっとは見られないけれど、こんな時ならゆっくり観察できる。
甘く整った顔立ちをしている。だけどそれよりもこの顔がぱあっと笑顔で輝いたり、拗ねて口をとがらせたり、真剣な横顔を見せたりと、コロコロ変わる表情に弱いんだと思う。
「陽介」
声をかけるが、反応はない。半開きになっている唇に釘付けになる。白い歯や覗き見える歯ぐきのピンク色に誘われる。
「あんまり無防備だと襲うぞ」
ゆっくりと顔を近づけた。
もうあと少しで、唇と唇が触れ合いそうになった時。
「ん………」
半開きになった陽介の目と合った。
思わず距離をとろうとした、が。
「あいぼー………」
とろんと垂れ目がちな瞳に見つめられて、やがてふにゃりとゆるめた頬で微笑まれた。
なんだ、この可愛い生き物は。ドッドッと心臓の音が高鳴っているのが自分でもわかる。
早くこの生き物を自分だけのものにしないと、誰かに奪われるんじゃないか。本能のようなものが向こう側から扉を開けろと音を立てて急き立てる。
「………ぇ………?あっ、ごめ、ちょっと今寝ぼけてた………」
急に目の焦点が合った陽介が慌てふためいて起きあがった。
「い、いや………」
なんと言っていいのかわからなくて、こっちまで照れてしまう。
「………なんか夢でも見てた?」
「ゆっ、夢なんて見てねーよ!?」
誤魔化しているのは明白だったが、こっちも寝込みを襲おうとした身だ。お互い様というやつだ。だからそれ以上は追求できなかった。
気心の知れた相棒で、それと同時に一番の愛しい人で。
どこまで踏み込んでいいものか、陽介との距離がつかめなかった。
やさしい風が吹いている。
大地の上で微睡んでいた。
とてもいい匂いがする。なんだっけ、この匂い。
ああ、そうだ。これは相棒のにおいだ。シャンプーとかボディーソープとか、相棒自身の匂いが入り交じったやつ。俺の好きな匂い。
いつの間にか相棒が俺の横に寝そべっていて、ふわりと抱きしめてくれた。とても優しい眼差しで俺を呼んだ。
「陽介」
その声が好きで、その眼差しが好きで、いつまでも眺めていたい。
「相棒………」
その端正な顔がゆっくり近づいてきた。ああ、キスされるんだ。そう思って、目を閉じようとした時だった。
不意に気がついた。
ん………俺、相棒の部屋でゲームをしてなかったっけ?
ふとそう気がついて、よく見ると、目の前の相棒は夢じゃなく、現実の相棒だということに気がついた。
「………ぇ………?あっ、ごめ、ちょっと今寝ぼけてた………」
慌てて起き上がると、相棒も身を引いて、口元を手で覆った。
「い、いや………」
あーびっくりした。こいつとキスするとかあるわけないのに。っていうか、なんでそれを自然なことだと俺は思っちまったんだろう。目を瞑って応えようとしてたよな!?
自分で自分がわからなくて、なんだか心臓の辺りがズキズキと痛い。なのにそれが全然嫌じゃない。
「………なんか夢でも見てた?」
そう問われて、かあっと顔が熱くなった。
察しのいい相棒でもまさか、夢の内容までわからないよな…?どうか顔に出ませんように。
「ゆっ、夢なんて見てねーよ!?」
どこからが夢でどこからが現実だっただろう。
それを問いただす勇気は俺にはなかった。
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No.225|主花SS|Comment(0)|Trackback