SS「チョコレート大惨事」
2017/02/12(Sun)11:00
高校2年の付き合ってる主花によるバレンタインSS
本文はつづきからどうぞ~
「バレンタインの日、俺の家に遊びに来いよ。へへ…期待してくれよな。あ、親もクマもジュネスで当分帰って来ないから」
そんなことを言われたら彼氏の身としては期待せざるを得ない。思わずスキップしてしまい、誰も見ていなかったことを確認し、再び花村家に向かう。
だが、その時の俺は浮かれきってすっかり忘れていたのだ。俺の恋人は運をどこかに置いて生まれてきてしまったあの花村陽介だということを。
『相棒ぉ………』
インターホンを鳴らしたらそんな情けない声が返ってきて。とりあえず家に入って奥に進むと、なぜかチョコレートが入ったボウルを頭からかぶった陽介がキッチンに立ち尽くしていた。
「芸人か、お前は!?」
思わずそうツッコまずにはいられなかった。
散乱したテーブルの上を見るとどうやら頑張ってチョコを手作りしていたらしい。そして湯煎をしてたらしいボウルと湯水とココアパウダーがテーブルの下でぶちまけられて大変なことになっている。
「途中までは順調だったんだぜ?…ただ、クマが遊んでたスーパーボールが下に転がってるのに気づかなくて、躓いちまって、思わずテーブルクロスに掴まって…んで、気がついたらこうなってマシタ…」
「はー……」
思わずため息が漏れてしまう。
「本当にお前は…とにかく風呂に行って洗い流すぞ」
「うん…」
かぶっていたボウルをテーブルに置き、陽介の手を取ってバスルームへと連れて行く。手を引かれている陽介はしゅんとした様子で黙ってついて来る。よっぽど落ち込んでいるんだろう。それはそうだ。俺たちが恋人になって初めてのバレンタインなんだ。ちゃんとしたものをプレゼントしたいと思うのは俺も同じだったから。
「俺の手作りチョコを持ってきたから、後で一緒に食べよう」
「ん……」
「とりあえず先に」
バスルームに着いて陽介の上着を脱がせて上半身裸にすると、顔に張り付いているチョコを舐めた。
「ぅひゃっ?」
びっくりした陽介が慌てて俺を見た。
「ん、美味しい。陽介のチョコ」
「あ、ちょ、」
首に跳ねたチョコを舐めると陽介は首をのけぞらせる。
「あ、いぼう…っ」
「こんな時、可愛い恋人はなんて言うんだっけ?」
鎖骨に張りついたチョコも、胸まで垂れたいやらしいチョコも。ひとつひとつ丁寧に舐め上げていく。そのたびに半開きになった唇からは甘ったるい吐息が漏れる。だんだん俺の熱も上がっていく。
するとハニーブラウンの君は熱っぽい瞳で俺を見つめ、やがて口を開いた。
「………俺を食べて、相棒?」
俺たちはチョコの味がするキスをした。何度も、何度も。
詳細は省くが(可愛い陽介を自慢はしたいが、同時に誰にも教えたくないから)、とても甘ったるいバレンタインだったということだけは教えておく。
色々すべて洗い流してさっぱりした後、部屋でゆっくり俺の作ったチョコを食べながらくつろいでいた。
「片づけは………まあいーよな後で…疲れたし…」
「ああ……後にしよう…」
そんな風に現実を見ないでいたのが良くなかった。
「キャー!なによこれ!?」
階下で悲鳴が上がった。
ジュネスから帰ってきたお母さんがキッチンの惨状を目の当たりにしたらしい。
陽介と見合わせて一緒に口元をひきつらせた。
その後、俺たちは小一時間正座させられて説教を食らう羽目になるのだった。
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No.212|主花SS|Comment(0)|Trackback