「Yの軌跡」サンプル
2018/04/24(Tue)21:55
5/3に開催されるSUPER COMIC CITY27の新刊サンプルです。
今回はコピー本です。
陽介と主人公(鳴上悠)の受験にまつわるお話。
付き合っているふたり。高校三年の冬。
全年齢向け
A5/16p/200円/コピー本
私が陽介と番長の名前は入った三色ボールペンを作った時に思いついた話です。
表紙は今作成中で、タイトル部分はもうちょっと凝った感じになる予定です。外注している印刷が届いて製本できたらまたお知らせします。
本文サンプルはつづきのリンクからどうぞ。
在庫限りで終了。通販は自家通販のみの扱いとなります。
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センター試験までもう数える程の日数に迫ってきた。
そんな中、悠が冬休みの間、八十稲羽に帰ってきてくれた。俺の試験前の勉強を見てくれるためだ。
自分だって受験勉強があるのに、「教えた方が俺も覚えたことの整理になるから」と言ってくれた。一年間の予備校通いもあって、だいぶ志望校の合格ラインには近づいていたけど、どうにも自信が持てないでいたので、その申し出は本当に有難かった。
年末年始で予備校が休講になると、堂島さんの家の相棒の部屋に通い詰めた。相棒がまとめてくれた試験前に押さえておきたい箇所の頻出問題を解くことを繰り返した。その後に悠と同じ科目をテスト形式で時間を計って解いて、それぞれ答え合わせをして、わからない部分については悠に解き方やポイントを解説してもらった。
予備校で同じタイプの問題を解説してくれたが、悠が教えてくれた方が頭にすんなり入ってきて理解しやすい。それに問題を解くたび、「よくできている」とか「ここを解けるようになれば確実に点数アップだ」と励ましてくれるから、俄然やる気が出る。
今日は午前中に訪ねて数学をやって、昼飯も悠が作ってくれて、午後は英語にとりかかった。
少し集中力が途切れて、悠を見た。真剣な眼差しで問題を解いていて思わずその横顔に見とれた。長い前髪が垂れ、その隙間から色素が薄くて意志の強い瞳が覗き見える。悠が真剣に何かに取り組んでいる姿を見るのが好きだ。
視線に気づいた悠が目線だけこちらに向け、口角を上げるから思わず鼓動が高鳴った。
「キリが良いところだし、そろそろ休憩にしようか。陽介が持ってきてくれたお菓子を出すよ」
「お、おう。サンキュ」
悠が立ち上がって、キッチンからコーヒーを持ってきてくれた。
コーヒーを飲むと、思わず息を吐いて、大きく伸びをした。さすがに毎日机と向き合ってると肩が凝る。
「はー、色々教えてくれてサンキュ。俺、詰め込みすぎて、ちょっと不安になってたんだ。いざ試験になった時、ちゃんと覚えたことを使えるのかってさ」
「どういたしまして。大丈夫、一緒に確認した感じ、陽介は覚えたことを正確に理解しているから。ポイントをしっかり押さえて、後は落ち着いて試験に挑めれば問題ない」
そう微笑まれて、心からホッとした。同じ言葉でも、学校の先生や塾の講師から言われるより悠に言われた方が安心できるから不思議だ。
「あー…ほんと、悠がこっちに来てくれて安心した。試験でそっちに行ってもお前の顔を見られるしさ」
大学に試験を受けに行く期間は悠の実家に泊まらせてもらうことになっている。その間、悠に会えると思うと試験への緊張もやわらぐというものだ。
「あ、そういや親御さん俺のこと、なんか言ってた? 毎回泊まらせてもらって有難いけど。迷惑になってない?」
キャンパスの見学や悠に会いに行くたびにお世話になっているし、今回も泊まりでお世話になるから、ちょっと心配だったんだ。
「父さんも母さんも陽介に会うのを楽しみにしている。他に泊まるとか水くさいこと言うなよ」
「……あのさ…」
前から気になっていた話を切り出すと、「ん?」と悠が小顔を傾けた。
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No.255|オフ活動|Comment(0)|Trackback