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ラフレシ庵+ダブルメガネ


アナコン御礼+ペーパーSS

2018/03/12(Mon)19:30

もうずいぶん前になってしまったんですが、アナコン有り難うございました。pixivの方にアップしていたのですっかりこっちのブログもUPしたものだと思いこんでました;

初めましての方にお会いできたり、私もそろそろ主花界隈の方のお顔を覚えられて(本当に今頃って感じですが)色々お話できて楽しかったです。

↓続きにアナコンで無料配布したペーパーSSをアップしました。
アイススケートをする主花(大学生・同棲中)です。

次回参加は5月のスパコミです。
ただまだ手が腱鞘炎で、毎日ちょっとずつ書いている状態なので新刊があるかは微妙な感じです。
7月の主花プチオンリーには絶対なにか新しいものを出したいと思っているのでそちらに照準を合わせていこうと思っています。









 二人でこたつに入りながら、テレビで放送しているフィギュアイスダンスのペアの試合を観戦していた。

「八十稲羽にはスケートリンクがなかったよな。相棒、滑ったことある?」
「小学生の時、学校の行事で滑ったな」
「俺も小さい頃に家族で行ったきりだ。あんな風に滑れたら気持ち良いだろうなー」

 一緒に顔を見合わせると、にっと笑った。

「よし、行ってみるか」
「おう!」




 電車に乗って、一番近くにあるスケートリンク場に行ってみた。
 スケート靴をレンタルして、リンクの傍に行くと、ブームなのかリンクの中には子どもから年配の人までたくさんの人が滑っている。靴を履いて気合いを入れた。

「んじゃ、初心にかえってまずは滑れるようになるまで練習だな」
「ああ。やってみよう」

 手すりにつかまって、おそるおそるリンクに降りると、自分の意思とは関係なく、するすると前に進んで行ってしまう。手すりは遠く彼方、掴まるものが何もない。

「おわああ、これ、どうやって止まればいいんだ?」
「こう、横にして。あ、陽介、危ないぞ」

 横にって何をどういう横なんだよ?
 説明してくれる相棒とは別の方向へ滑って行ってしまって、混雑しているのに避けることもできない。

「うおおおおおお」

 うまい人はスイスイと避けてくれるけど、俺に気がつかなかった小学生の女の子にとうとうぶつかってしまった。慌てて謝ったが、女の子は気にした様子もなくすぐに起き上がって滑っていく。一方の俺は起き上がりたくても今度は後ろに滑ってしまって尻餅をついてしまった。

「うう…俺、小学生より滑れねーのかよ…」
「大丈夫か、陽介」

 難なく滑ってくる相棒に、思わず目を剥いた。

「おま、なんでそんなに滑れるんだよ? 小さい頃滑ったきりなんじゃねーの?」

 相棒はドヤ顔で胸を張った。

「ゆうべネットで調べて滑り方について予習してイメージトレーニングをしてきた」
「自分だけずりぃ!俺にもそーいうの、見せてくれよな!」

 相棒が手を伸ばしてくれて、ようやく俺も起き上がることができた。

「こうやって直に教えた方が陽介の好感度が上がるだろう?」

 たしかに、にこりと笑う相棒は貴公子そのもので、もともとイケメンだけど、氷上だと更に増し増しで輝いている。

「もうこれ以上は上がりませんって言ってるだろ。 …思わずキュンとしちまったじゃん」
「ふふ、光栄です」

 相棒が誘導するまま、二人で手を繋いで滑った。

「膝を緩めて、片方のブレードだけで進行方向に逆ハの字で開き気味で歩いてみて」
「こんな感じ?」
「そうそう、上手。もう片足がブレーキやアクセルだと思って、止まりたかったら逆Tの字で垂直に刃で止めて、進みたかったらハの字で蹴って」
「おー。なんかだんだんわかってきた気がする」

 色々コツを教えてもらいながら、相棒の真似をしてブレードを傾けてカーブを曲がってみる。相棒と手を繋いで滑っているから重力で引っ張られる感覚も心地よい。カップルみたいに繋いでも、初心者だからって皆思ってくれるだろうし、人目を気にしなくて良いからこっそり嬉しい。
 だんだん滑るコツがつかめるようになってくると、混んでいるところで身を寄せるようにして相棒の腰に掴まったり、相棒も一瞬だけ手を離したりと遊びが入ってくる。

「なんか楽しくなってきた」
「俺も。一緒に踊ってみようか」
「え?」

 相棒がゆうべ観たペアの男子選手よろしく俺の手を恭しく取ると、それを中心にくるくると俺の周りを回り出す。って俺が女役かよ。

「こんな感じ?」

 俺も相棒に合わせてそれらしい振りで滑ると、真剣な表情の相棒がだんだん近づいてきて俺の腰を引き寄せる。まるで運命の相手に引き寄せられるみたいだ。その動きに任せて俺も相棒の胸に抱きつく。
 目が合った相棒と両手を繋いで、混雑の中、隙間を縫うようにステップを踏んでみる。手を離して一緒の振りで回ってみる。一緒に軽くジャンプする。めちゃくちゃだけど楽しくて、転びそうになるとすぐ相棒が引き寄せてくれるから安心して滑れる。

「よし、リフトしてみるか」
「おわっ」

 相棒が俺の両脇を抱えて持ち上げたので、慌てて相棒の両肩に掴まった。俺、そこまで軽々と持ち上げられる程軽くはないつもりなんだけど? 俺が風呂場でゆだったり、ソファで腰が抜けて動けなくなった時とかベッドまで運んでもらう時があるけど、いつも軽々と抱き上げるんだよなあ。 ……まあそれは元はと言えばこいつのせいでもあるんだけど。
 ゆっくり降ろされて、思わず胸に抱きついてほっと息をついた。やっぱりこの目線が一番落ち着く。
腹をくくって、相棒にしなだれかかって、片手を相棒の肩に添え、相棒を見つめる。すると相棒も俺を見て、こめかみにちゅっとキスしてきた。

「ばっか…こんなとこで」
「ふふ。きっと演技だと思ってくれるよ」

 相棒が俺を氷上に降ろすと、ふたりで向き合ったまま小さな円を描いてクルクル回って、フィニッシュにふたりで手を拡げてポーズして止まった。
 すると周りから歓声と拍手が上がった。いつの間にか俺たちの拙い踊りを見てくれていたようで、「技術はないが、息が合ってたぞ」「ふたりとも楽しそうでつい見入っちゃった」「ふたりでペア組んじゃえば」などと感想までもらってしまった。

「あはは…どうも」

 キスされたところも見られてたのか。思わず顔が熱くなり、相棒を振り返った。すると相棒は真剣な表情で俺を見ている。

「陽介、俺たちもついにアイスダンスデビューか」
「なんでもその気になるなっつーの!」

 いつだか夫婦漫才をやって仲間に受けた時、相棒から「よし、コンビ結成しよう」と真顔で誘われた時と同じように、頭にチョップしてツッコミを入れた。

「もう俺ら、相棒なんだから、それで充分だろ」

 そう小声で伝えると、相棒は嬉しそうに笑った。

「そうだな。相棒で恋人で、俺の最高のパートナーだからな」

 あまりにも幸せそうに笑うから、俺まで感化されたのか、ふわふわと気持ちで舞い上がってしまい、なんだか胸がいっぱいになってしまった。



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