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ラフレシ庵+ダブルメガネ


【主花SS】交換アドベントカレンダー

2023/12/23(Sat)19:57

大学生主花で同棲しているふたりの話です。
本文はつづきリンクからどうぞ!




 相棒とふたりで100円ショップに行って消耗品を買い足していた時のこと。
「本当に何でもあるな。アドベントカレンダーまで置いてある」
 相棒につられて見ると、それはクリスマスツリーが描かれた箱。ツリーの絵の辺りにさらに小箱があって、1、2と数字が描かれている。
「それってクリスマスの季節に飾るやつだよな」
「うん。クリスマスまで25日分のお菓子とかおもちゃとかちょっとしたご褒美が入っているんだ。子どもの頃、祖父母に買ってもらったことがある」
 そういえばジュネスにも季節の特設コーナーで置いてあったな。両親と来ていた子どもが欲しいってねだっていた。
「これは中身が入ってなくて自分で好きに入れられるみたいだな」
「へえ。それなら菓子以外も入れて楽しめそうだな」
 すると相棒は悪戯っ子みたいな目をした。
「陽介。アドベントカレンダーをふたりで交換するってどう?」
「それ面白そうだな。やってみようぜ!」
 さっそく相棒は赤や緑のにぎやかなアドベントカレンダー、俺は白とベージュが基調のアドベントカレンダーを手に取った。
12月1日の朝に交換する。そして中身は総額で3000円以内というルールをもうけた。
 最初は個包装のクッキー、キャンディー、チョコレート、ラムネ、グミと順調に入れていく。しかしそれらが尽きるとまったくといって思いつかない。
「うーん……お菓子以外で入れられるもの……」
 自分の引き出しに入っているものやディスプレイに飾ってあるものを見る。時計とかアクセサリーは高すぎて無理だし、本当にちょっとしたものでいいんだよな?
「あ、消しゴムがあったな」
 子どもの頃好きだったアニメシリーズの消しゴムが復刻したのを見かけてつい大人買いしてしまったのがあったはずだ。その時一緒にいた相棒も「懐かしいな。俺も1個だけ持っていた」なんて言ってたから嫌いではないだろう。
 それからひとりでおもちゃ屋やギフトショップへはしごして、ワンコインで手に入るミニカーや小さなスノードームも入れてみた。
「よし、これで10日分は埋まった」
 あとはバイトでもらった映画の優待券やコンビニのクーポンを折りたたんで入れたり、ギフト用のドリップコーヒーやちょっといい紅茶を入れてみる。
「うん。これで20日分まではオッケー」
 ここまでで2000円を越えてしまった。あと5日分をなんとか1000円以内で納めたい。
「小さくて、もらったら嬉しいもの……うーん……」
 もらったら嬉しいかどうかはさておき、小さいものというキーワードで浮かんだものがいくつかある。
「たぶん1000円には収まっているはず……うん」
 それらを手に入れると小箱に入れていく。まあ相棒が笑ってくれればそれで良し。
 しかし最後のひと箱が決まらない。もうネタが出尽くしてしまった。あと予算も。あちこち店を回ってみたが、いいものが見つからない。
「明日が12月1日だから明日までには入れとかないとだよなあ」
 ノートにアイデアを書こうと机に向かってみたけれど、真っ白な紙面のまま何にも思いつかない。
 お金がかからなくて、相棒が喜ぶもの。
 今まで相棒が喜んでくれたものを考えてみる。
 いつも弁当を作ってくれるお礼にってあげたおやつ。
 特捜隊の皆で遊ぶ予定を計画したことを喜んでくれたっけな。
 あとは一緒の大学に行きたいって俺が宣言した時にも喜んでくれたなあ。それがきっかけで相棒が告白してくれて付き合いはじめたんだよなあ。
 あのキラキラとした眼差しで見つめられたら男同士とかどうでもよくなっちゃったっつーか。相棒とならきっと大丈夫って思えたんだ。
実際同じ大学に受かって、一緒の部屋に住み始めてみて、毎日が充実していて本当に楽しい。意見が合わない時もあるけど、話し合いとかジャンケンとかで決めたり、なんだかんだ考え方の違いも楽しんじゃっている。
「って脱線しちゃってるな。うーん」
 今までのことを振り返ると、物よりは気持ちを伝えることを相棒は喜んでくれる気がする。
「手紙……? 小さいメッセージカードとか。……うん。いいかも」
 白と緑、2色のサイズ違いの厚紙を貼り合わせて小さなメッセージカードを作る。そこへ想いを綴ってみた。それを最後の箱に入れる。
「よし。できた!」
 これで相棒にあげるアドベントカレンダーが完成した。
 相棒はどんなアドベントカレンダーを作ってくれるんだろう。台所から甘い香りがすることもあるけれど、そういう時はうっかりネタバレしたくないので自分の部屋にこもっている。顔を合わせると何も言わないけど楽しそうな顔で俺を見るから、きっと相棒も楽しんでいるんだろうな。


 いよいよ12月1日の朝、ふたりでアドベントカレンダーを交換した。相棒がくれたアドベントカレンダーには何が入っているんだろう。
 それに俺が作ったアドベントカレンダーの中身を見て、相棒はどんな反応をするんだろう。
「これ、もらう側もあげる側もわくわくするなー」
「ああ。さっそく箱を開けるぞ」
「俺も!」
 俺のあげた白とベージュの箱から相棒が1と書かれた箱を引き出した。中からキラキラした赤い包装をつまみ上げた。
「チョコレートだ」
 子どものように微笑んで、さっそく包装を開けて丸いチョコレートを口に放り込んだ。
「俺の方もチョコレートだ」
 箱の中には5円玉の形のチョコレートが入っている。俺もさっそく食べた。安っぽい味だけどそれがなんだか懐かしい。
「このチョコ四六商店に売ってたよな」
「そうなんだ。偶然見かけて嬉しくなっちゃって。お互いチョコでかぶったな」
 ふたりで笑い合った。クリスマスまで毎日ちょっとした楽しみがあるってなんだかいいな。


 そうして2日目と3日目は両方ともお菓子が入っていて、それらを一緒につまんだ。相棒お手製のクッキーとパウンドケーキはとても美味しかった。
 すると4日目。相棒にもらったアドベントカレンダーからは小さな厚紙が2枚出てきた。
 中には絵と文字が色鉛筆で書かれている。
 表紙のタイトルは「相棒くん空を飛ぶ」。
「これって……相棒作の本?」
「そう。豆本を作ってみた。なかなかよく出来ているだろう?」
 胸を張って誇らしげにしている相棒を見て思わず笑ってしまった。そうか、買わなくても自分で作るっていう方法もあったか。
「その発想はなかったぜ……!」
 読んでみると「相棒くん」はマッシュルームの形をしたキャラクターで、持っている黄色い傘と一緒に空を飛んでいる。海の向こうへ渡っていったところで終わっている。
「えっ……これで終わり?」
 4ページしかない。さすがに続きが気になりすぎる。
「またどこかの箱に入っているかもね」
 よく見ると紙はパンチで穴があいていて、緑の紐が添えられている。続きを綴れるようになっているんだろう。ほのめかすような言い方でよけいに続きが気になってしまう。
 一方、相棒は手に入れたミニカーを見てキラキラとした瞳をしている。
「小さいのによくできているな」
「相棒はプラモデルを作るのが好きだからこういうの気に入るかなって思ったんだ」
 そう答えると相棒がこちらを振り返ってふわりと微笑んだ。
「俺の好みを考えてくれてありがとう」
「へへ。どういたしまして」
 相手のことを考えながら作るアドベントカレンダーってなんだか楽しいな。クリスマスってこんなにあたたかなものなんだと初めて知った。


 そうして相棒からは駄菓子、それに海岸で拾った貝殻や綺麗な石などをもらった。
 相棒くんシリーズはというとその後「相棒くん」が海に落ちてクジラに食べられたり、宇宙人にさらわれたりしながら23日の箱で「相棒くん」の探していた恋人に出会い、キスしてハッピーエンドというオチがついた。
「シンプルな話なのに数日後にならないと続きが読めないから無性に続きが気になった。けどハッピーエンドで終わって良かったぜ」
「喜んでもらえてよかった」
 相棒の絵ってなんだか味があるし、この豆本を持っているのは世界に俺だけという特別感もあってなんだかくすぐったい気持ちになる。
「さて、陽介の箱は」
「あー朝にお出しするもんじゃないかも……」
「なんだろう」
 相棒が24の箱を開けた。中にはコンドームが入っている。相棒のサイズのが予算に収まるよう2個分入っている。
「あー、えっと。いつもお前にソレでお金使わせてるなって思って……深い意味はないから」
「陽介……」
 なんかめちゃフェロモンの出た顔で肩を抱いてくるからうっかり流されそうで慌ててその胸を押した。
「誘ってるわけじゃないから……っ、朝だし。な?」
 そう伝えると、相棒も息を吐いて「そうだな」と落ち着きを取り戻した。
「クリスマスはまだ25日が本番だしな」
「うん?」
 その言い方が妙に引っかかったが、相棒は朝ご飯の用意を始めたので続きを聞くことはできなかった。


 そして25日の朝。
「いよいよ最後か。なんか終わってみるとあっという間だったな」
「ああ。陽介はだいぶお金を使ったんじゃないか?」
「んーまあな。でもギリギリ予算内にはおさめたぜ?」
 そういえば相棒からもらったプレゼントは手間がかかったものが多いけどお金はかかってなさそうだ。
「それじゃあ開けるか」
「そうだな。オープン!」
 相棒にあげた箱からは俺の作ったメッセージカードが出てきた。そこにはこう書かれている。
『メリークリスマス。お前と一緒で毎日が楽しい。これからもよろしく』
「陽介……嬉しいな。ありがとう。メッセージカードも他のプレゼントも大事にする」
「おう。相棒のは……っと」
 箱を引き出すと赤い布地が出てきて広げてみると、なぜかささやかな布地に細い紐がついたパンティーが入っている。赤い紐の先に白いボンボンがぶら下がっている。
「これってどう見ても女物だよな……?」
 にこにこと相棒がうなずいた。
「本当はサンタ衣装をまるごと入れたかったんだけど入りきらないので。これだけにした」
「これだけ、じゃねーよッ! まさか俺に着ろって言うんじゃ」
「うん。すごく着てほしい」
 キラキラした目で即答するんじゃねーよ!
「俺の今までの感動を返してくれ。オチがこれかよっ! つか予算をほぼコレにつぎこんでるだろ!」
 しかも相棒は自分の部屋からミニスカサンタ衣装も出してくるし。衣装まであるのかよ。上はスケスケだし、下は尻が半分隠れるか隠れないかぐらいしかない。これをサンタの衣装だと言ったらサンタさんが怒るぞ。
「高校の時は俺がサンタで陽介がトナカイだったから。逆バージョンにしてみた」
 そう言って、相棒はトナカイの衣装を身につけはじめた。高校の時と逆ならなんで俺だけ女装なんだよ。心の底からツッコミたい。
「メリークリスマス。陽介。今夜はご馳走を作るぞ」
 楽しそうにクラッカーまで鳴らし始めたもんだから、俺は何も言えなくなる。クリスマスを心から楽しんでいる相棒に水を差すのもどうかと思う。思うけど。
「俺は着ないからなーーーーー!」

 結局、夜はどうなったかというと。
 相棒にめちゃくちゃ美味しいクリスマス料理を作ってもらった俺は何もしないわけにはいかなかったということだけはお知らせしておきます。あとは以下略!

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No.325|主花SSComment(0)Trackback

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