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ラフレシ庵+ダブルメガネ


陽介誕SS「刻まれるもの」

2016/06/22(Wed)21:18

陽介お誕生日おめでとう!!!!emojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemojiemoji
今年はついった上でカウントダウンを迎えられてみなさんのお祝いメッセージやイラストやケーキ写真など愛されてるなあって実感できる誕生日でとても楽しかったです。中の人のお祝いが一番強烈…!!!

誕生日SSを上げときました。
タイトルがぜんぜん思い浮かばなかったので自分でもよくわからないタイトルになってしまった…
考えるんじゃない、感じるんだっていうアレでお願いしますw
ピクシブでは念のためR18設定にしときましたが直接的な描写はないのでこちらのブログにも載せときます。
SS本文は続きからどうぞ~




「最後に花村陽介君、学生時代の一番の思い出はなんですか?」

 面接官になげかけられた問いに俺はあらかじめ用意していた回答をゆっくりと話し始めた。
「本分である大学の勉強も生活のためのバイトも頑張りました」
 話していくうちに熱がこもり、枠通りの答えではどこか満足してない自分がいた。





 ふたりで住む部屋に着くと鍵を開けて入った。
「ただいまー」
「おかえり」
 リビングに入ると悠がキッチンから顔を出してきた。
「おっいい匂いがしてる。もう焼いてるのか?」
 事前に誕生日は何が食べたいか聞かれて、焼き餃子を食べたい気分だったのでリクエストした。
 悠の後ろを見ると、テーブルにホットプレートが載っていて、俺がリクエストした焼き餃子はまだ生のまま皿に置かれていた。
「焼き餃子もいつでも焼けるよう準備してあるよ。どうせならと思って実家から蒸し器を借りてきて蒸し餃子とエビしゅうまいを作ってみた。蒸し器なら同時に野菜も蒸せるからいっぺんにできて便利だな」
「へーすっげー!楽しみ!つか、去年みたいに前夜祭、後夜祭とかまで催さなくていいからな?今年は普通に祝ってくれよ、頼むから」
「何度も念を押されたからな…仕方ない………」
 そう言いつつもかなり不満そうだったが、さすがに4年次で院試に向けて準備中の悠にそこまで時間をとらせたくない。
 出会って一年目に俺の誕生日を当日祝えなかったことが相当ショックだったと言っていた。だからみんなで出かけたりふたりきりで外でデートしたり、毎年色んな形で祝ってくれて、本当にその気持ちだけで胸がいっぱいになる。
 着替えようと思って俺の部屋に移動しながらネクタイを緩めると、悠が一緒に俺の部屋に入ってきた。
「そういえば今日の面接、いい感じでできた?」
「えっ……わかる?」
 ふふ、と悠が笑った。
「何年のつき合いだと思っているんだ。陽介はテンション高い時とそうでない時の落差が激しいしね」
「そんな違うかー?」
 リクルートスーツのジャケットをハンガーにかけ、ネクタイを抜き、シャツも着替えようとしたところで悠から声をかけられた。
「あ、ちょっと待って。シャツは脱がないで、そのままで」
「え?」
「はい、誕生日おめでとう。これ、俺から」
 そう言って手渡されたのはシックなブラウンのリボンでくるまれた長細い包みだった。
 悠のことだからきっと用意してくれてるだろうとは思っていた。だけど夕食後にくれるもんだと思ってた。だからびっくりして悠を見た。
「開けてみて、陽介」
「おう…」
 受け取った包みを丁寧に開いて化粧箱を開けると、そこにはオレンジに近い赤を基調とし、ゴールドの文様が入っているネクタイが入っていた。
 手に取ってみるとすごく生地がしっかりしている。たぶんシルクじゃないだろうか。
「…なんか高そう。こんなんもらっていいのか?」
 悠が嬉しそうに頷いた。
「ちょっと貸してみて。つけてあげる」
 高校時代ブレザーじゃなかったからいまいちネクタイの扱いに慣れてない俺の代わりに、就活に行く時はよく悠がネクタイを結んでくれる。
 布が擦れる音だけが響いて、キスできそうなほど近い距離で恋人がネクタイを結んでくれる。なんだかイケナイ気分になってくる。
「今、なに考えてるの?陽介」
「え……あ?」
 俺の思考を読まれてしまったんだろうか。結び終わった悠がちゅっと可愛い音を立ててキスしてくれた。
「そういえばお帰りのキス、してなかったな」
 そう言って額をくっつけて見つめてくる。
 ふだん穏やかなのに、こういう時だけ雄っぽい顔をするのは反則だ。
 かっこ良くて可愛くて、同棲したら幻滅する部分もあるのかなって思ってたけど実際一緒に暮らしたら全然そんなことなかった。一緒にいることがすごく自然なことで、特別なことをしなくても一緒に過ごしてるだけで幸せを感じられる。
 たまにくだらないことでケンカしてしまうけど、大好きで、これからも一緒にいたいって気持ちはお互い変わらなくて、ケンカしてる時間がもったいないってすぐに仲直りする。
 俺も好きって気持ちをこめてキスを返すと、悠はくすぐったそうに笑ってくれた。
「ほら、鏡を見てみて」
「お…すげ…なんかオレ、かっこ良くね?なんつーか、クラスが上がった感じ?」
「ハハ、自分で言っちゃうところが陽介だな。うん、でも想像以上にかっこ良い。こういうデザイン性の強い華やかなものが本当に似合うな」
「へへ…サンキュ」
 すると一体どこに隠し持っていたんだろうか、もうひとつの小さなペーパーバッグを渡された。
「それで、こっちは八十稲羽のみんなから」
「おー」
 こちらも小さな化粧箱に入っていて、開けると腕時計が入っていた。
「これ…俺が欲しかったやつ……!」
 前に悠と一緒に街へ出た時に一目惚れした腕時計。メタリックシルバーのアーム部分も、ケースの外周と中心部分の引き締め色の黒も、細かな秒針の刻印や歯車のレトロさやアクセントになっている赤い秒針とかどれをとっても俺の好みだと思った。
 だけどおいそれとは買えない値段だったし、両親に学費を出してもらっている身だったからバイト代で買えないことはなかったけど、社会人になってから買おうと思っていたのだ。
「みんなでお金を出し合ったから値段のことは気にしないでいいと思うよ。来年から社会人だからね、陽介にはちゃんとかっこ良くキメてほしいんだってさ」
「あー、電話で礼言っとかないとな。つか、お前がこの時計のことを教えてくれたんだろ。ありがとうな!」
「陽介が喜んでくれて俺も嬉しいよ」
 悠にもらったネクタイをつけたまま、腕時計も腕に装着した。なんか新しい武器や防具を身につけた時の気分だ。
 みんなや悠がすぐ傍で見守っていてくれるような感覚。
「…今の会社、最終面接まで進んだら俺、両方つけてく。そしたら受かる、受かりそうな気がする!」
「陽介なら緊張しなければ大丈夫。ありのままを伝えればきっと面接官の人も陽介の魅力をわかってくれるよ」
「おう、ありがとな!」
 卒論も同時進行で進めていかないといけないし、色々不安もある。だけど悠にそう言われると本当に大丈夫って思えるから不思議だ。
 悠にハグして、感謝とか好きって想いをこめて笑いかけた。
「よっし、じゃあ着替えてくるからメシにしようぜ!もう口ん中、いつでも餃子スタンバイって感じになってる!」
「ハハ、じゃあ準備してくる」






 それから和気藹々と食事をした。ホットプレートで焼きたてのアツアツ餃子に中華スープ、そして蒸し餃子やエビシューマイもやっぱり最高にうまくて、ビールもすすむし腹いっぱい食べた。
 その後、ソファに移動すると里中たち八十稲羽組とこっちに滞在してるりせと直斗に電話した。テレビ電話で悠と肩を並べて話すとみんなぎゅうぎゅうに顔をくっつけ合ってそれぞれ好き勝手に話すから、何を喋っているのかわからない。おまけに悠の手料理を食べたと知って口々に文句まで言われる有様。だけど俺を祝ってくれるって気持ちだけはすごく伝わってきて、胸があったかくなった。
 通話を切ると、悠がデザートにお手製の小さなケーキを持ってきた。悠も隣に座って部屋の明かりを消すとロウソクの光にふたりの顔が照らされた。
 毎年のごとく未だに調子っぱずれなバースデーソングを歌ってくれて、なんだか消すのが勿体ないなあと思ったけど悠に促され、ゆっくり息を吹いてロウソクの火を消した。
「こうやってゆっくり誕生日を過ごすのもいいもんだなー」
 週末や土日にからんだ誕生日の時は外でデートしたり、みんなでディスティニーシーに行って遊んだりもした。それもすごく楽しかったけど、日常の延長みたいな感じで祝われるのもなんだかじわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
「そうだな。外じゃこんなことできないしな。はい、あーん」
 ケーキを切り分けた悠がひと切れフォークに刺して差し出してくる。
「う…そうデスネ」
 恥ずかしさがこみ上げながらも口を開け、目の前に掲げられたひと切れを頬張った。食べてみると見た目よりさっぱりしてていくらでも食べれそうだ。
「ん…美味しい。チーズケーキ?」
「うん。今日のおかずが餃子だったからね。ヨーグルトも混ぜてさっぱりさせてみた」
 そう言いながら水出しコーヒーの入ったグラスも出してくれた。
「さっすが相棒。すげーうまい!つか、俺、毎年こんなに祝ってもらって幸せ者だな」
 すると口端にクリームがついていたらしく、悠が手を伸ばし、指ですくってそれを舌で舐めた。
「当たり前だ。陽介が生まれてくれてこうして出会えたこと、毎日だって祝いたいくらいなんだから」
「悠………ッ」
 それを言うなら俺だって毎日感謝したいくらいだ。悠と出会ってなかったらちゃんと自分と向き合えず、色んなことから逃げていたんじゃないかって思う。
「両親が育ててくれて色んな奴らの影響受けて。そういうのにも感謝だけどさ。一番は悠がいるから今の俺がいる。だから誕生日は俺にとって悠との色んな思い出を振り返る日だなって思うよ」
「陽介…」
 肩を寄せ合ってキスした。ふたりでニンニクの匂いするなって笑い合いながら、だけどキスをやめることはなかった。ふたりで身体に触れあったり足を絡め合ったりした。
「俺たち…いつまでもこうしていられるのかな」
 触れ合いながらふとそんな言葉が口からとび出してしまった。せっかくの雰囲気を壊してしまったかと思って慌てて悠を見た。
 でもずっと胸にひっかかっていたことだった。就活をして、俺が会社に勤めるようになってもし転勤にでもなったら。悠が留学することになったら。離れる要素なんていくらでもみつかる。
 すると悠がきょとんと目を見開いた。
「ずっと同じってことはないだろ。今までだって離れていた一年があったわけだし」
 平然とそう言うから思わず心臓が跳ねる。だけど悠はこう続けた。
「きっといろんなことが変わっていく。環境が変わって陽介自身も変化していく。俺はそれを恋人として一番傍で見ていられるのが幸せだなって思うよ」
 そう言われて胸がジンとしびれた。
「うん…そうだな。俺も。ずっと傍で、お前がもっともっと男前になってく姿を一番近くで見ていたい」
「ふふ…頑張らないとだな」
 環境が変わっても、たとえ一緒に暮らせない事態になったとしても、心だけは悠の一番近くにいたい。寄り添っていたい。
「陽介は俺やまわりのみんなをちゃんと頼ってくれ。頼りにしてくれないのも寂しいからな。ひとりで不安にならなくていいよ」
 額をこつんとくっつけて悠が苦笑いした。なんだか俺までおかしくなって、一緒に笑った。なんだかそれだけで大丈夫って思えて力が湧いてくるから本当に悠はすごい。きっとそう本人に言ってもわかってはもらえないんだろうけど。
「おしゃべりはそろそろ終わりにしないか?可愛い陽介を目の前にお預けされて結構ツライ」
 そう悠が息を吐いて苦笑いするから、こちらから腕を背中にまわしてキスを仕掛けて、深い深い快楽の海へと潜っていった。
 誕生日の夜はまだまだ続きそうだ。







「お…わたしは学生時代、かけがえのない仲間達に出会えました。そして絶対に負けたくないって思うライバルで一生ものの相棒にも出会えました。そのことがわたしの学生時代の一番の思い出で大事な宝です。きっと…彼らが…彼が居なかったら自分自身の嫌だと思う部分を認められず、見ないフリをしていつまでも抜け出せず、自分をごまかして無理に笑顔を作って生きていたと思います。本当に感謝しています。だから、これからも、社会に出て……もし御社で勤めることになったとしたら、どんな人とも出会えたことに感謝して、今度はその人たち支えになりたいです。そうすることで、自分も世界…って言うと大げさかもしれませんが、社会と繋がっていることを実感できるんじゃないかなと思っています」

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No.190|主花SSComment(0)Trackback

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