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ラフレシ庵+ダブルメガネ


SS「休日の過ごし方」

2017/05/15(Mon)21:00

ツイッターの「主花版深夜の創作60分一本勝負」に参加させていただきました。
お題「休日」

たまにはこんな休日を過ごしてほしいという願望をこめて。


本文は↓続きからどうぞ~







相棒の部屋に遊びに行った。約束をしていなかったから、会えなければ手みやげのプリンを菜々子ちゃんに渡して帰ればまあいいかと思って気軽に押し掛けたんだけども。
「で、………なんでこんなことになったんだっけ?」
「本当によく来てくれた、陽介」
いつもの表情筋をどこかに置いてきた、一見するとクールな顔で見上げてくる相棒。
本当になんでこんなことになっているんだろう。

なんで俺の太腿を枕にして、相棒は腰に抱きついているんだ?

すると俺の気持ちを汲み取ったのか、ぽつぽつと呟くように説明してくれた。
「なんかもういっぱいいっぱいで…バイトと部活動とテレビで予定がいっぱいなのに、その上依頼を頼まれるとどうしても断れなくて………できるだけやれることは平日にこなして、ようやく休日だと思ったら映画や遊びの誘いが入って………誘われるのは嬉しいし、だけどなんかもうとにかく限界で」
「お、おう………お疲れ」
「この前の日曜は海老原と沖奈に出かけたら天城とばったり会って。なぜかお互い険悪なムードになっちゃって…休みの日くらいはリラックスして過ごしたい…」

さすが相棒、おモテになることで。でも、確かにこのところ疲れた顔をしていた。テレビでも目当ての素材を持ったシャドウになかなか遭遇できなくて相当時間がかかったし、バイトもいくつも掛け持ちしているらしいし、体力半端ないコイツでも忙しいとストレスが溜まってしまうんだろう。

「だから今日は一日中読書でもしようかなって思っていたんだ」
「そっか……なんか邪魔しちまって悪かったな」

相棒のアッシュグレイのさらさらした髪を撫でてやると、くすぐったそうに目を細め、こちらに視線を向けた。まるで血統書付きの上等な猫がじゃれているみたいだ。
「陽介は特別だから」
思わず胸が高鳴った。「特別」って、どういう………
「お前と居ると楽なんだ。深呼吸できるっていうか…すごくリラックスできる」
そう言われると悪い気はしない。むしろ嬉しすぎる。相棒は俺にとってもうとっくに一番の特別だから。
「あー…空気みたいな存在ってやつ?倦怠期の夫婦みたいだな」
なんとなく気恥ずかしくてそう茶化すと、なぜか腰に回していた手がいやらしく動いた。腹や腰を繊細な手つきで撫でられると、なんだか、ちょっと…
「ちょっ、待っ」
「刺激が欲しいんだろ?」
「そういう意味じゃないんですけど!」
あんま触られるとなんだか下半身まで反応しそうになるから、マジでやめてほしい………!
慌てて相棒の手を掴んで引き剥がした。
「刺激はもう充分です!」
「ふうん?」
手を元に戻されて、心からほっとした。
なんだかつまんなそうな顔をされても俺の方が困るんですけど。コイツ、俺の反応を楽しんでやがるな。
「俺、陽介とはずっと蜜月がいいな」
「あーはいはい」
適当に流して、「もういいから、とにかく休め」と相棒の背中をポンポンと軽くたたいてあやす。
すると相棒は何か言いたそうな顔つきをしながらも腹にぐりぐりと額を押しつけ、一番いい寝床を探し始めた。
くすぐったいのを我慢してされるがままになっていると、しばらくして相棒の寝息が聞こえ始めた。マジ寝するならちゃんと布団で寝ればいいのに。
「俺だって………」
相棒が寝ていることをいいことに、そっと呟く。

俺だって、お前とは蜜月でいたい。
ずっと仲良くて、一緒にいると楽しくて、お互いのこと一番理解し合って支えられる存在でいたい。
できたら同じ大学に行きたいし、そしたらルームシェアもしたいし、就職して、いつかお互いに彼女ができて、もしかしたら結婚なんかしちゃったりして、そうしたらお互いの家を行き来したりして、爺さんになっても縁側で日向ぼっこしながら茶をすする関係でいたい。
…なんてことを考えてる時点で俺、かなり重たいかもしれない。







その頃の俺はまだ気づいてなかった。
いや、たぶん相棒の言葉を素直に受け止めるだけのキャパがなかったんだ。
そんでもって相棒がいつも俺との約束を一番に優先してくれていたことも、どれだけ信頼して心を許してくれていたかも全然わかっていなかったんだ。


相棒に「膝枕してほしい」と甘えられて、嬉しくて、求められるまま頷いた。

「思い返すと、あれは高校生活で一番贅沢な休日の過ごし方だったな」

俺を見上げて相棒がそう回想した。
「まあ…あの時と今とじゃ俺の気持ちもずいぶん変わったけどな」
「そうだな。でも俺の気持ちは今も昔も全然変わらない。いや…もっと愛しくなったかも」
そう微笑まれ、じっと見つめられるからいたたまれない。
「あんま見るなって…」
「陽介、可愛い」

ああ、俺たちの蜜月は、きっとこれからも続いていくんだろう。

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No.228|主花SSComment(0)Trackback

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