【主花】【主丸】2/12アナコン無料配布SS
2023/02/12(Sun)10:30
バイト中のP4主人公(鳴上 悠)×陽介と、同棲している主人公(暁 透流)×丸喜先生という謎時空のバレンタインSSです。
完全に俺得でしかない4人の話ですが……ギャグ風味です。
特にネタバレはありません。
いつかこの4人の話をきちんと書いてみたい。
SSはつづきのリンクからどうぞ。
「愛の証明」
週末、ショッピングモールで一週間分の食料や日用雑貨などを買い物している最中のこと。
「何か買い忘れはなかったかな?」
透流君が「うーん。何か忘れているような」と首をかしげ、ハッとしたようにこちらを見た。
「そうだ。ココアを買うのを忘れていた」
「ココア? 珍しいね」
いつもはコーヒーを飲んでいるけれどココアを飲みたい気分なんだろうか。
すると透流君が僕を見てニコリと微笑んだ。
「もうすぐバレンタインなので。丸喜にカフェモカを飲んでもらおうと思って」
「ああ。そっか」
そういえば、時々催事場などでチョコレートの販売をしているのを見かけていた。もうすぐバレンタインか。何となく女性のためのイベントだと思っていた。そういう記念日を大切にしてくれる透流君らしい気遣いだ。
「カフェモカってコーヒーにココアが入っているんだ?」
「ああ。普通のコーヒーよりちょっと甘味があって優しい味なんだ」
「へえ。飲むのは初めてかも。楽しみだなあ」
さっそくふたりで食品売り場に移動すると、入り口付近でバレンタインの催事がやっていた。
「この辺にもココア、売ってそうだね」
「ああ。……それにしても混んでいるな」
特に混んでいるのは試食コーナーのようだ。背の高い男性ふたりを多くの女性客がとり囲んでいる。
「いらっしゃいませ。チョコレートの試食はいかがですか」
「オレンジピールが薫るチョコレートです。はい、どうぞ。お、押さないでください……っ」
ココアの売ってる場所を探しつつもついそちらに目が行ってしまう。
「あのふたり……どっかで見たような……」
透流君の視線が注がれているのは試食を薦めているエプロンを着た青年ふたりだ。どちらも大学生くらいに見える。
ひとりはグレイの色素の薄い前髪に見え隠れしている瞳が印象的で、落ち着いた雰囲気で接客している。
彼とは対照的にブラウンの髪の男の子は笑顔全開で、元気に声を張ってあちこちのお客さんに試食を差し出している。
「あ、市ヶ谷の……!」
透流君は近づいていってふたりの前に行こうとしたが、女性達がぎゅうぎゅうに押し寄せているので近寄れない。女性客はチョコというよりもほとんどあのふたりが目当てで群れを成しているように見える。
透流君はあきらめて苦笑いしながらこちらに引き返してきた。
「透流君の知り合い?」
「いえ、こちらが一方的に知っているというか。前に市ヶ谷で釣りをしていた時にふたりを見かけて」
こっそりと僕に耳打ちをしてくる。
「あのふたり、恋人同士みたいだったから。ちょっと話してみたいなって思ったんです」
「え……?」
友達同士でバイトしているのかなと思っていたので少し驚いた。
「試食、終了です……!」
「押さないで、ゆっくり後ろにお願いしまーす」
ふたりは圧迫されて今にも押しつぶされそうだ。しぶしぶといった感じで女性客が少しずつ散っていく。「イケメンだったわね」「うふふ。ついついアタックしにいっちゃった」などと女性客たちは頬を染めて微笑んでいる。
残されたふたりは片付けをしながら話している。
「はあ。今年は去年よりもすごかったな……俺も圧迫死するかと思ったぜ……」
「ああ。ちょっと怖かった。チョコってすごいんだな」
「いや、相棒効果じゃね? 相棒、この後どうする? 疲れたし外でメシ食う?」
相棒と呼ばれたグレイの髪の青年はふっと微笑んだ。
「いや。今日はバレンタインのための準備をする」
「準備って……バレンタインデーはあさってだろ? 何の準備をするんだよ」
「収穫したカカオ豆の選別をしてこれから挽くんだ」
「か、カカオ豆~~~?」
ブラウンの髪の青年が驚いて目を丸くしている。いや、彼じゃなくても驚いてしまう。準備ってそこからなのか。
「他のパティシエが作ったチョコなど一口たりとも入れたくない。俺が作ったもの100%で陽介の身体を満たしたいんだ」
「ちょっとその発想怖いんだけど。いや、気持ちは嬉しいけどさ! そこまでしなくても……あ、つか最近農業研によく行ってたのはこれだったのか!」
「ああ。この日のために教授にハウスを借りて栽培、発酵、乾燥までやらせてもらったんだ。豆を砕いて皮を取り除くまでが今日のミッションだ。そして明日はきび砂糖の収穫および砂糖を煮詰める作業だ」
「カカオ豆って日本でも作れるのか……つか、砂糖も手作りかよ!」
「そしてバレンタイン当日にチョコレートを精製し、最高のチョコレートケーキを作る」
「気合い入れすぎだろ!!そこまでしなくても……お前と一緒にいられるだで幸せなんだからさ」
その言葉に思わず頷いてしまう。
「陽介への愛を形として表現するならこれくらいでは足りないくらいなんだ」
「あ、相棒……」
ちょっとびっくりするくらい相手の男の子想いなんだろうな。そう思って見ていたら、突然隣にいた透流君の膝がくずれおちた。
「透流君……?!」
「俺が甘かった……!」
くっと悔しそうに歯噛みしながら頭を抱えている。
「バレンタインは愛を伝える日だと思っていた。だが、それは勘違いだった。バレンタインとは愛する人に自分のありったけの愛を証明する日……!」
何かを悟ったような顔で透流君が立ち上がり、こちらを振り返った。ちょっと目が血走っている。
「俺、今から準備します! 当日は丸喜に俺の愛の形を表現してみせるので、楽しみに待っていてください!」
「えっ、ちょっと、透流くん……!?」
透流君は歩きながら携帯電話で「バレンタイン当日に予約できますか?……はい、そうですか……失礼します」と何件も電話をかけている。そしてしばらくすると戻ってきて、流れるような動作でココアを購入し、再び走り去っていってしまった。
取り残された僕は一体どうしたらいいんだろう。
なんだか今年のバレンタインはいつもと違う予感がする。
家に帰るとモルガナ君がいて、透流君がいて。一緒にご飯を食べたり時々出かけたりして、日々を過ごせることが僕にとっては夢のように幸せで。だからバレンタインはそんな日常を感謝する日でありたい。
「……一緒に過ごせたらそれだけで嬉しいんだけどな」
思わずこぼすと、近くにいた「陽介」と呼ばれていた男の子も僕達の様子を見ていたようで、「お互い、完璧主義の相手がいると大変っスね……」と苦笑いされたのだった。
完全に俺得でしかない4人の話ですが……ギャグ風味です。
特にネタバレはありません。
いつかこの4人の話をきちんと書いてみたい。
SSはつづきのリンクからどうぞ。
「愛の証明」
週末、ショッピングモールで一週間分の食料や日用雑貨などを買い物している最中のこと。
「何か買い忘れはなかったかな?」
透流君が「うーん。何か忘れているような」と首をかしげ、ハッとしたようにこちらを見た。
「そうだ。ココアを買うのを忘れていた」
「ココア? 珍しいね」
いつもはコーヒーを飲んでいるけれどココアを飲みたい気分なんだろうか。
すると透流君が僕を見てニコリと微笑んだ。
「もうすぐバレンタインなので。丸喜にカフェモカを飲んでもらおうと思って」
「ああ。そっか」
そういえば、時々催事場などでチョコレートの販売をしているのを見かけていた。もうすぐバレンタインか。何となく女性のためのイベントだと思っていた。そういう記念日を大切にしてくれる透流君らしい気遣いだ。
「カフェモカってコーヒーにココアが入っているんだ?」
「ああ。普通のコーヒーよりちょっと甘味があって優しい味なんだ」
「へえ。飲むのは初めてかも。楽しみだなあ」
さっそくふたりで食品売り場に移動すると、入り口付近でバレンタインの催事がやっていた。
「この辺にもココア、売ってそうだね」
「ああ。……それにしても混んでいるな」
特に混んでいるのは試食コーナーのようだ。背の高い男性ふたりを多くの女性客がとり囲んでいる。
「いらっしゃいませ。チョコレートの試食はいかがですか」
「オレンジピールが薫るチョコレートです。はい、どうぞ。お、押さないでください……っ」
ココアの売ってる場所を探しつつもついそちらに目が行ってしまう。
「あのふたり……どっかで見たような……」
透流君の視線が注がれているのは試食を薦めているエプロンを着た青年ふたりだ。どちらも大学生くらいに見える。
ひとりはグレイの色素の薄い前髪に見え隠れしている瞳が印象的で、落ち着いた雰囲気で接客している。
彼とは対照的にブラウンの髪の男の子は笑顔全開で、元気に声を張ってあちこちのお客さんに試食を差し出している。
「あ、市ヶ谷の……!」
透流君は近づいていってふたりの前に行こうとしたが、女性達がぎゅうぎゅうに押し寄せているので近寄れない。女性客はチョコというよりもほとんどあのふたりが目当てで群れを成しているように見える。
透流君はあきらめて苦笑いしながらこちらに引き返してきた。
「透流君の知り合い?」
「いえ、こちらが一方的に知っているというか。前に市ヶ谷で釣りをしていた時にふたりを見かけて」
こっそりと僕に耳打ちをしてくる。
「あのふたり、恋人同士みたいだったから。ちょっと話してみたいなって思ったんです」
「え……?」
友達同士でバイトしているのかなと思っていたので少し驚いた。
「試食、終了です……!」
「押さないで、ゆっくり後ろにお願いしまーす」
ふたりは圧迫されて今にも押しつぶされそうだ。しぶしぶといった感じで女性客が少しずつ散っていく。「イケメンだったわね」「うふふ。ついついアタックしにいっちゃった」などと女性客たちは頬を染めて微笑んでいる。
残されたふたりは片付けをしながら話している。
「はあ。今年は去年よりもすごかったな……俺も圧迫死するかと思ったぜ……」
「ああ。ちょっと怖かった。チョコってすごいんだな」
「いや、相棒効果じゃね? 相棒、この後どうする? 疲れたし外でメシ食う?」
相棒と呼ばれたグレイの髪の青年はふっと微笑んだ。
「いや。今日はバレンタインのための準備をする」
「準備って……バレンタインデーはあさってだろ? 何の準備をするんだよ」
「収穫したカカオ豆の選別をしてこれから挽くんだ」
「か、カカオ豆~~~?」
ブラウンの髪の青年が驚いて目を丸くしている。いや、彼じゃなくても驚いてしまう。準備ってそこからなのか。
「他のパティシエが作ったチョコなど一口たりとも入れたくない。俺が作ったもの100%で陽介の身体を満たしたいんだ」
「ちょっとその発想怖いんだけど。いや、気持ちは嬉しいけどさ! そこまでしなくても……あ、つか最近農業研によく行ってたのはこれだったのか!」
「ああ。この日のために教授にハウスを借りて栽培、発酵、乾燥までやらせてもらったんだ。豆を砕いて皮を取り除くまでが今日のミッションだ。そして明日はきび砂糖の収穫および砂糖を煮詰める作業だ」
「カカオ豆って日本でも作れるのか……つか、砂糖も手作りかよ!」
「そしてバレンタイン当日にチョコレートを精製し、最高のチョコレートケーキを作る」
「気合い入れすぎだろ!!そこまでしなくても……お前と一緒にいられるだで幸せなんだからさ」
その言葉に思わず頷いてしまう。
「陽介への愛を形として表現するならこれくらいでは足りないくらいなんだ」
「あ、相棒……」
ちょっとびっくりするくらい相手の男の子想いなんだろうな。そう思って見ていたら、突然隣にいた透流君の膝がくずれおちた。
「透流君……?!」
「俺が甘かった……!」
くっと悔しそうに歯噛みしながら頭を抱えている。
「バレンタインは愛を伝える日だと思っていた。だが、それは勘違いだった。バレンタインとは愛する人に自分のありったけの愛を証明する日……!」
何かを悟ったような顔で透流君が立ち上がり、こちらを振り返った。ちょっと目が血走っている。
「俺、今から準備します! 当日は丸喜に俺の愛の形を表現してみせるので、楽しみに待っていてください!」
「えっ、ちょっと、透流くん……!?」
透流君は歩きながら携帯電話で「バレンタイン当日に予約できますか?……はい、そうですか……失礼します」と何件も電話をかけている。そしてしばらくすると戻ってきて、流れるような動作でココアを購入し、再び走り去っていってしまった。
取り残された僕は一体どうしたらいいんだろう。
なんだか今年のバレンタインはいつもと違う予感がする。
家に帰るとモルガナ君がいて、透流君がいて。一緒にご飯を食べたり時々出かけたりして、日々を過ごせることが僕にとっては夢のように幸せで。だからバレンタインはそんな日常を感謝する日でありたい。
「……一緒に過ごせたらそれだけで嬉しいんだけどな」
思わずこぼすと、近くにいた「陽介」と呼ばれていた男の子も僕達の様子を見ていたようで、「お互い、完璧主義の相手がいると大変っスね……」と苦笑いされたのだった。
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No.314|主丸&主花|Comment(0)|Trackback