【主丸SS】あるふたりの日常
2020/07/12(Sun)21:27
ぷち企画のお題「選択肢」を書こうと思ったんですが、書いてるうちにお題とは話がズレてしまった気がするので企画には参加せずにUPします。
真ED後の同棲している主丸のはなしです。
続きリンクからどうぞ。
丸喜と買い物をするために渋谷の街を歩いていた時のことだ。
正面からアロハシャツを着た小太りの男が丸喜の方に視線をちらりとやりながらぶつかってきた。
「あっ、すいません。大丈夫ですか?」
丸喜が振り返って謝ると、相手の男は「はあ、そんなんで謝ってるつもりか。もっときちんと謝れ」などと突っかかってくる。
だからすかさず横槍を入れた。
「今の、わざとぶつかっただろう。わざわざこっちに寄って歩いてきたのを見たぞ」
「…え?」
そんなことをされるとは思いもしなかったんだろう。丸喜がきょとんとした顔をしている。
相手を見ると「は? んなわけねえだろ」と少々バツの悪そうな顔をしている。
「お前こそきちんと謝れ」
「んだとぉ?」
「ちょ、僕は大丈夫だから。ね?」
丸喜が怒らないからこういう輩がつけあがるんだろう。丸喜に非はないのについそう考えてしまう。
「ほら、こいつがそう言ってるんだからオマエは関係ねーだろ」
そういうので余計に頭がカーッとした。
だが丸喜は冷静だった。
「もしわざとやったんだとして、それを彼にやったのなら僕も怒るよ」
静かな口調にはっとした。丸喜はじっと彼を見ている。それにヤツが怯んでいる。
「もし、そんな風に誰かに当たり散らすことでストレスを発散しようとしているのならやめた方が良い。そんなことで気は晴れないよ」
その場にそぐわずニコッと丸喜は笑った。
「スポーツして汗を流したり、友達とお喋りしたり、何か問題があるなら相談できる所はいっぱいある。ストレスを発散できる方法や問題の解決法は色々あるはずだよ。それとも僕が相談に乗ろうか?」
丸喜が両手を広げて距離を詰めようとするから、慌てて男が引き下がった。
「う、うるせえッ」
そう言いながら慌てて男は走り去った。どうやら丸喜をなめてかかっていたが、予想と反してヤバいヤツだと感じたらしい。
「あー…行っちゃった。見ず知らずだし、信用してもらえなかったかあ」
丸喜は眉をハの字にして頭を掻いている。フリでも何でもなく、本気で彼に心に寄り添おうとしたらしい。
「ふっ」
思わず声に出して笑ってしまった。そんな風に「改心」させる人を初めて見た。
「何が面白いんだい?」
瞬きをしながら丸喜が俺を見ている。
「丸喜ってすごいなあって。俺には相手の心を変えようなんて選択肢は思いつかなかった」
「そんなことないよ。結局彼に後悔の気持ちを持ってもらうことはできなかった」
「いや、あれは結構効いてる」
あの様子なら少なくともしばらくは人に絡もうなんて思わないだろう。
「そうだったら良いけどね」
ただ怒るだけじゃダメだ。自分なりの熱意をもって相手の心根を掴んで揺さぶらないとそいつの心には響かない。悪いヤツなら尚更だ。現実はパレスやメメントスみたいに簡単にはいかない。
丸喜の心の強さは人を愛する気持ちが原動力なのかもしれない。
「丸喜みたいにはできないけど、俺も自分なりのやり方でできると良いな」
「うん。君ならできるよ」
笑顔で丸喜がそう言ってくれると、不思議と自分でもできるような気がしてくるから不思議だ。丸喜の言葉には力がある。それは丸喜の力なのか、あるいは自分が丸喜に心を寄せているからなのか。
「それからね」
丸喜がそっと俺の手を取った。
「さっきは僕のために怒ってくれて、守ろうとしてくれてありがとう。見た目が怖い人に怒るのって勇気がいるよね。だからすごく嬉しかったよ」
垂れがちな瞳をゆるめて丸喜がぎゅっと手を握った。それだけでのモヤモヤした黒い気持ちがどこかに吹きとんでしまう。
俺が笑うと、丸喜もまた笑ってくれた。
真ED後の同棲している主丸のはなしです。
続きリンクからどうぞ。
丸喜と買い物をするために渋谷の街を歩いていた時のことだ。
正面からアロハシャツを着た小太りの男が丸喜の方に視線をちらりとやりながらぶつかってきた。
「あっ、すいません。大丈夫ですか?」
丸喜が振り返って謝ると、相手の男は「はあ、そんなんで謝ってるつもりか。もっときちんと謝れ」などと突っかかってくる。
だからすかさず横槍を入れた。
「今の、わざとぶつかっただろう。わざわざこっちに寄って歩いてきたのを見たぞ」
「…え?」
そんなことをされるとは思いもしなかったんだろう。丸喜がきょとんとした顔をしている。
相手を見ると「は? んなわけねえだろ」と少々バツの悪そうな顔をしている。
「お前こそきちんと謝れ」
「んだとぉ?」
「ちょ、僕は大丈夫だから。ね?」
丸喜が怒らないからこういう輩がつけあがるんだろう。丸喜に非はないのについそう考えてしまう。
「ほら、こいつがそう言ってるんだからオマエは関係ねーだろ」
そういうので余計に頭がカーッとした。
だが丸喜は冷静だった。
「もしわざとやったんだとして、それを彼にやったのなら僕も怒るよ」
静かな口調にはっとした。丸喜はじっと彼を見ている。それにヤツが怯んでいる。
「もし、そんな風に誰かに当たり散らすことでストレスを発散しようとしているのならやめた方が良い。そんなことで気は晴れないよ」
その場にそぐわずニコッと丸喜は笑った。
「スポーツして汗を流したり、友達とお喋りしたり、何か問題があるなら相談できる所はいっぱいある。ストレスを発散できる方法や問題の解決法は色々あるはずだよ。それとも僕が相談に乗ろうか?」
丸喜が両手を広げて距離を詰めようとするから、慌てて男が引き下がった。
「う、うるせえッ」
そう言いながら慌てて男は走り去った。どうやら丸喜をなめてかかっていたが、予想と反してヤバいヤツだと感じたらしい。
「あー…行っちゃった。見ず知らずだし、信用してもらえなかったかあ」
丸喜は眉をハの字にして頭を掻いている。フリでも何でもなく、本気で彼に心に寄り添おうとしたらしい。
「ふっ」
思わず声に出して笑ってしまった。そんな風に「改心」させる人を初めて見た。
「何が面白いんだい?」
瞬きをしながら丸喜が俺を見ている。
「丸喜ってすごいなあって。俺には相手の心を変えようなんて選択肢は思いつかなかった」
「そんなことないよ。結局彼に後悔の気持ちを持ってもらうことはできなかった」
「いや、あれは結構効いてる」
あの様子なら少なくともしばらくは人に絡もうなんて思わないだろう。
「そうだったら良いけどね」
ただ怒るだけじゃダメだ。自分なりの熱意をもって相手の心根を掴んで揺さぶらないとそいつの心には響かない。悪いヤツなら尚更だ。現実はパレスやメメントスみたいに簡単にはいかない。
丸喜の心の強さは人を愛する気持ちが原動力なのかもしれない。
「丸喜みたいにはできないけど、俺も自分なりのやり方でできると良いな」
「うん。君ならできるよ」
笑顔で丸喜がそう言ってくれると、不思議と自分でもできるような気がしてくるから不思議だ。丸喜の言葉には力がある。それは丸喜の力なのか、あるいは自分が丸喜に心を寄せているからなのか。
「それからね」
丸喜がそっと俺の手を取った。
「さっきは僕のために怒ってくれて、守ろうとしてくれてありがとう。見た目が怖い人に怒るのって勇気がいるよね。だからすごく嬉しかったよ」
垂れがちな瞳をゆるめて丸喜がぎゅっと手を握った。それだけでのモヤモヤした黒い気持ちがどこかに吹きとんでしまう。
俺が笑うと、丸喜もまた笑ってくれた。
PR
No.297|主丸SS|Comment(1)|Trackback
無題
2023/02/25(Sat)05:58
Also, many thanks for allowing me to comment!
No.1|by strawberry runtz strain|URL|Mail|Edit