主丸SS「胸の痛み」
2020/06/08(Mon)20:30
何をとは言いませんが、ネタバレ注意です。
いつの間にか、キラキラと輝く結晶が自分の手元にあった。クリスタルのようにも、ガラスにも見えるそれは幾重にも結晶が積み重なっていて、見ていると悲しくなるような光を湛えている。何となくそれを手放せなくて、布でくるんで制服の胸ポケットに入れておいた。
そんなある日、先生は赴任してきた。マイクに頭をぶつけ、皆がそれを見て笑っている。なのに、俺は笑えなかった。少し悲しそうにまつげを伏せる先生から目が離せない。
その後、俺たちが教室に戻ろうとするところを丸喜先生が声をかけてきた。
穏やかな瞳。優しげな語り口。
大人に対して警戒心の強い竜司は最初から先生のカウンセリングを拒否した。杏も口には出さないが同様のようだ。
お菓子があるよと誘われて、俺は頷いた。
「詳しく聞こう」
「ちょ、バッチリ釣られないでよ!」
菓子につられたつもりはない。ただ、先生に興味がある。それだけだ。
誘いに応じたことで、先生は嬉しそうに微笑んだ。
思わず胸を押さえた。布越しに、結晶が熱を帯びたような気がした。
いつか先生と何でも言い合えるくらい絆を深めたら、尋ねても良いだろうか。
「貴方を見ていると胸が痛いの、何でですか?」
いつの間にか、キラキラと輝く結晶が自分の手元にあった。クリスタルのようにも、ガラスにも見えるそれは幾重にも結晶が積み重なっていて、見ていると悲しくなるような光を湛えている。何となくそれを手放せなくて、布でくるんで制服の胸ポケットに入れておいた。
そんなある日、先生は赴任してきた。マイクに頭をぶつけ、皆がそれを見て笑っている。なのに、俺は笑えなかった。少し悲しそうにまつげを伏せる先生から目が離せない。
その後、俺たちが教室に戻ろうとするところを丸喜先生が声をかけてきた。
穏やかな瞳。優しげな語り口。
大人に対して警戒心の強い竜司は最初から先生のカウンセリングを拒否した。杏も口には出さないが同様のようだ。
お菓子があるよと誘われて、俺は頷いた。
「詳しく聞こう」
「ちょ、バッチリ釣られないでよ!」
菓子につられたつもりはない。ただ、先生に興味がある。それだけだ。
誘いに応じたことで、先生は嬉しそうに微笑んだ。
思わず胸を押さえた。布越しに、結晶が熱を帯びたような気がした。
いつか先生と何でも言い合えるくらい絆を深めたら、尋ねても良いだろうか。
「貴方を見ていると胸が痛いの、何でですか?」
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